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Moire Amore!(1)―現象編

むか~しむかし,あるゼミ生がモアレを題材に卒論を書いたことがある.
日付を見るともう8年も前,2代目の作品だ.tokidoki.hatenablog.jp
で今年の卒論,10代目となるのだが,
錯視の数理としてちっとも数学に乗ってこないゼミを1人行ってきた.
もとはベンハムのコマを数理的なモデルを立てて
色が見える仕組みの解明を目指していたのだが,
科学実験の枠を超えて数理モデルを立てるには未だ至らず.
(まじめにやると心理物理学とか生理光学とかにはまっていくし.)www.ncsm.city.nagoya.jp
拉致があかないので,
あるときから平行してモアレ現象で何かできないか探し始めていた.
ああ,あの干渉縞のことね,それなりに数式は立てられるだろうけど,
高校数学の練習問題ぐらいなんじゃない?と思われるだろう.
だが,中には結構面白い現象があるんだってことを最近知った.
なんと格子縞は拡大レンズの役割をするのだ.
初めは身の回りの品でモアレが起こる例としての下の動画の中で,
六方格子状に穴が並んだ板を重ねて回転させると
六角格子が拡大される現象から,おや?となったことに始まる.
モアレテスト - YouTube

あれっ,ってことは拡大レンズになるのかもしれない.
他にそんな実験してないか探したところ,例えば以下の動画などどうだろう.


Moire Lens/モアレレンズ - YouTube
同じ文字が細かく並んだシートの上に,同一ピッチで穴を開けたシートを載せると
小さな文字が拡大されて浮き出てくるのだ.な~んと.

で,ぼや~っと運転しながら考えてたら意味が分かってきた.
要するにこれは「粗視化」の一種なんだ.
遠くから見るという操作は,図形の高周波成分を短周期で積分してしまうと理解できる.
でもその前に自分の手の中でも実験したくなり,早速作ってみたよBASICで.
↓はその実験動画.前半は格子を微小角回転させて文字を拡大,
後半は格子のピッチを文字のピッチより縮小させて文字を拡大している.


拡大縮小モアレ模様 - YouTube

そしてそのソース.

REM
REM [Moire de expansion]
REM Ver. 2015/12/01
REM 左ドラッグしながら上にマウスを動かすと格子ピッチが縮小される
REM ドラッグしないで上に動かすと格子が左右に微小に回転する
REM

SET WINDOW 0,1,0,1
SET TEXT font "",7
LET dt=.01

! 下地となる文字模様画像作成
INPUT  PROMPT "Character":c$
FOR x=0 TO 1 STEP dt
   FOR y=0 TO 1 STEP dt
      PLOT TEXT ,AT x,y:c$ ! 拡大したい文字
   NEXT y
NEXT x
! このBasicファイルと同じ場所に下地となる文字模様画像を保存
gsave "moire.png"

! 画面のピッチに合わせて変更のこと(BASIC画面801×801では 6 が丁度良い).
SET LINE width 6
pause
DO
   mouse poll mx,my,left,right
   SET DRAW mode hidden
   CLEAR
   gload "moire.png"
   IF left=1 THEN
      LET e=1+my/10
      LET sx=mx/100
      FOR x=0 TO e STEP dt*e
         PLOT LINES: x+sx,0; x+sx,1
      NEXT x
      FOR y=0 TO e STEP dt*e
         PLOT LINES: 0,y+sx; 1,y+sx
      NEXT y
   ELSE
      LET sy=my/100
      LET sx=SIN((mx-.5)*PI/10)
      FOR x=0 TO 1 STEP dt
         PLOT LINES: x+sy,0; x+sy+sx,1
      NEXT x
      FOR y=0 TO 1 STEP dt
         PLOT LINES: 0,y; 1,y-sx
      NEXT y
   END IF
   SET DRAW mode explicit
   WAIT DELAY .1
LOOP UNTIL right=1
END

さて,これをどうやって数式で理解するか.それは次回に.

f:id:okiraku894:20151202123949p:plain:w400

残念な国(5)―国は人を以て盛なり

OECDの国際教員指導環境調査結果についての記事がちらほら見られたので,
国立政策研究所へ見に行ってみた.www.nier.go.jp
そこにTALIS日本版報告書「2013年調査結果の要約」が置いてある.
あるいはグラフなどで見やすくまとめたOECD国際教員指導環境調査(TALIS)のポイント
のほうが良いかもしれない.
特に最終ページにデータを上げてこの国の現況に対する主張がされていた.

とくにあちこちの記事で取りざたされているのがOECD平均38.3時間/週にたいして,
この国では飛びぬけて53.9時間/週という点だ.
その業務配分,事務業務が重荷なんだろう,と思ってたら,
それよりも課外活動(部活)に時間を吸われている.
調査6項目中5項目がOECD平均を上回り相変わらずな勤勉さがうかがえる.
そして皮肉にも唯一時間の短かった項目が教員の本分たる「授業時間」だった.
f:id:okiraku894:20151101114843p:plain
OECD国際教員指導環境調査(TALIS)のポイントから.
こうなってくると,教科教育と課外活動を同一の教員が行うのは
そろそろ諦めたほうが良いのではなかろうか.
課外活動専門の職や何らかの受け皿が本当は必要なんだろうと,
口には出さねど皆思っているのでは?

ま,だけど夢物語なんだろうね,お財布省がこれなんだから.news.tbs.co.jp
3.7万人削減で0.2兆円ほどの「節約」なのかな.
それだったら,シロウト目に「特別会計」どっか削ったらええやん,
とか思って現況を覗いてみた.www.mof.go.jp
およそ200兆円の3/4が社会保障と国債の償還と利子なんだね.
そしてよく見るとここには文科省固有の部分がない.
(法人化前の国立大学だったときはここに特別会計枠があったらしいが.)
でもなぁ,人を育てるほか生き延びる術のない国のはずなのに,
短期的な教育予算の付け方では育たないよね.
大学への予算どうのこうののことを言ってるんじゃないんだ.
教育全体への予算の付け方,これは国家100年の計として
外的状況がどう変わっても頑として子どもたちを育てる予算だけは
安定して確保できる仕組みにしておけなかったものだろうか.
賢い家庭だって未来を見越して教育費の積み立てをどうにかしてするものだろうに.

さて先程の調査の続き.一方でまた,そりゃそうだろうな,という結果も.
なぜならこれまで多くの教員自身が「主体的学び」を経験してこなかったのだから.
f:id:okiraku894:20151101115750p:plain
OECD国際教員指導環境調査(TALIS)のポイントから.
となると今すぐできることは,目の前の学生たち,やがて現場に出る学生たちに,
たとえ疑似的・錯覚であったとしても主体的に学んだという経験ができるよう
ささやかでも仕掛けを作ることだ,といつもの主張に戻るわけだ.

某国はその創設時より虎視眈々と覇権を目指して今日に至る.
数年ごとに顔を変えてきた,他国を出し抜くなんてことのできないこの国では,
権謀術数を張り巡らす国にとても対抗できる気がしない.
チェックメイトされる前に人を育てておかなくては.

山は樹を以て茂り,国は人を以て盛なり.
                吉田松陰

教員環境の国際比較 (OECD国際教員指導環境調査(TALIS) 2013年調査結果報告書)

教員環境の国際比較 (OECD国際教員指導環境調査(TALIS) 2013年調査結果報告書)

「主体的学び」につなげる評価と学習方法―カナダで実践されるICEモデル (主体的学びシリーズ―主体的学び研究所)

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人を伸ばす力―内発と自律のすすめ

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残念な国(4)―つまり様式美ということですか?

いやぁ,傾(カブ)いてたね,国会.
結局,幼稚園のお遊戯会で幕を閉じたんだね.

だけどね,振り返ってみて色々考えさせられたよ.
何より,憲法というものを恥ずかしながら生まれて初めて真剣に考えてみたよ.
そしてきっと,自分と同年代の多くの皆さんもそうだったのではないかと勝手に想像している.
自分にとって何よりショックだったのは,
憲法審査会での与党推薦を含めた学識者三人すべてが
「集団的自衛権」を行使する今回の法案を「違憲」と判断しているにも拘らず,
その後は当審査会を開催せず一切封印してしまったことだった.
何だろうな,ふと焚書坑儒を思い浮かべてしまったよ.全くもって見事な反知性主義だね.
web-saiyuki.net

実際のところ,安保法案の中身そのものについて自分は賛成も反対もしてるわけじゃないんだ.
というのも実際のところ,何が本当に変わるのか起こってみないと分からないからだ.
ただ,あいかわらず「なんちゃって民主主義」で終わってしまう,
この国の空気が残念で仕方ないんだ.
そして与党内野党,つまり実質的に野党の役割をしていた
自民党内の「モノ申す」派閥が無くなってしまったこと,
自民党の大政翼賛会のような空気が気味悪くて仕方ないんだ.
それは特定秘密保護法案が通ったときにも感じたことなんだけどね.

国際情勢の急激な変化の中,一市民の自分の想像をはるかに超えて
実際,事を急がねばならない事情がきっとあるのでしょうね.
それでも,かの大戦の記憶の残っている人たちが物申せた時代なら,
少なくとも今回の法案を時限立法にしたんじゃないだろうか.
例えば3年あるいは5年に限った法案として,その間に国民の間で十分な議論を行う.
憲法改正からやっていたのでは間に合わないのだとしても,
とりあえず期限付きで運用して,その間に国民のコンセンサスを形成するやりかたは
ありえなかったのだろうか?

どちらにしても,憲法学者93%以上(報道ステーションアンケートに基づく推定値)
が「違憲」と判断している中で,対話ではなく終始「説明」だけに留まった政府のやり方,
これほどあからさまな子供じみたやり方は多分過去に例がないんじゃないだろうか.
(つまりかつての「大人」が居た自民党だったらもっと上手くやってただろう.)
大体,採決直前の公聴会って何のためにやるのさ.先の憲法審査会と同じノリだよね,それ.
あ,因みにその推定問題は今年の確率統計に出したんだよ.

さて,でも憲法学者はどのように「違憲」と判断しているのか,
「偉い人が言ってるから」で終わらせてちゃ「なんちゃって」だね.
で,一つリンクを.

こんな風に憲法学的に通常の読み方をすると「違憲」になってしまう.

でも,更にそれに対し異論を唱え,憲法を未来に開かれた道具として捉える,
もう一つ上の次元の議論をする人もいた.
必要に応じ,時代の状況に応じ,憲法を柔軟に改憲する文化のある国に対し,
「解釈改憲」という文化もあっても良いんじゃないか,という提案.

そうなると良いなとは思う.
でもねこれ,改憲する文化より遥かに高度な民主的な市民でないと難しいだろうな.
少なくともまずい発言が出たら真正面から議論することなく蓋をしてしまう政府や,
「戦争法案」と一般市民の不安に訴え掛けやすい文言で議論をすり替えてしまう野党とでは
解釈改憲の文化なんて夢のまた夢のように思えてしまう.

主権者の国民が選挙で選んだ代表者らに権力を付託したとき,
その権力が暴走せぬよう制限し主権者たる国民の人権を保障するってのが憲法なんだね.
随分長い間,人類はわずかな独裁者の下でまとまって社会を成してきたのだけど,
ようやく近代になって個人からなる社会を作るところまできた.
その文脈の中で憲法を端的に表した言葉があるそうだけど,
誰が言った言葉なのか結局辿れなかった.

人類の進化の歴史がDNAに刻まれているとすれば,
人類の英知の歴史は憲法にこそ刻まれていると言うべきでしょう.
平和憲法のメッセージ

www.iacl-aidc.org

何にしても政府が国民に「腹を割って」正直に語りかけてくる時代って,
この「様式美」(要するにお約束)の国に訪れるのかなぁ.
あるいは「しょうがないじゃん」と諦めて,長いものに巻かれやすい国民性からして
一億人レベルでの民主主義はムリなのかなぁ...

ぼくらの民主主義なんだぜ (朝日新書)

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残念な国(3)―「丁寧な説明」

【問1】報道ステーションが去る6月に憲法学者ら198人にアンケートをとり,151人から回答を得た.その第1問,「一般に集団的自衛権の行使は日本国憲法に違反すると考えますか?」について,151人中4人が「憲法違反の疑いはない」と答えた.
この結果から日本全体の憲法学者のうち何%が合憲と判断するか信頼度99%で区間推定して下さい.

これは今年度の「統計とコンピュータ」にて出題した最終チェック問題の一つだ.
母比率の推定を行え,という問題なわけだが,まぁその答えは
f:id:okiraku894:20150829143155p:plain
となる.実際は数学的な前提,「確率変数」(この場合は憲法学者一人一人の回答)
が互いに独立である,つまり
「憲法学者たちが互いの意見に影響されず独立に判断していること」が必要だ.*1
その前提が満たされているとするなら,この国の憲法学者ら全員に尋ねても99%の確率で
高々6%が「合憲」と判断するという意味になる.
もちろん,いま目の前で異常なことが起こっているんじゃないかぃ,
と学生らに気付いて欲しいという意図アリアリで出題したのだけど,
そもそも肝心の問題に手を付けてもらえていなかった,それこそ高々6%も無いくらいに.
合掌.


しばしば有識者と呼ばれる人たちが政府に招かれ,述べた見解を「参考」にし,
ときには政府方針補強に利用されるわけだけど,
自民推薦の有識者含めた3者全員から「違憲」と批判されて以来,
憲法審査会は結局開かれなかったのだよね.こうして臭いものには蓋をしちゃうんだね.
web-saiyuki.net

PKO法案ですら数回の国会をまたいで議論され,
そうして「まがりなりにも」時間を掛けたことで,
ある意味その歴史的転換に国民も参加できていたのだが,
閣議決定されてからわずかひと月余りのうちに成立した「特定秘密保護法案」にはじまり,
いよいよこの9月中旬に参議院可決されてしまうであろう話題の安保法案という具合に,
「丁寧な説明」を行い,「粛々と」ことを進めていくわけだ.
そして「説明」という時点で「国民とは対話はしないよ」とも言っているだよね.
まぁしかし,これほどまでに大事な転換点に主権者たる国民を正面から参加させないやり口に,
息の軽い,哲学の無い,筋を通さない政治に,多くの人が憤っているのは確かだ.

生きる場所と考える自由を守り,創るために,
私たちはまず,思い上がった権力にくさびを打ちこまなくてはならない.

  自由と平和のための京大有志の会「声明書」より

www.kyotounivfreedom.com

先の大戦前夜,世界恐慌によって国は困窮し人々は不景気に喘いだ.
活路を見出すべく,国粋主義,全体主義がこの国を覆った.
「ネトウヨ」と呼ばれる人たちの書き込みを見る度,
あの大戦前夜もこんなふうに閉塞し鬱屈した空気だったのかもしれない,と
とても嫌な暗い気持ちになる.

反知性主義が蔓延って久しいこの国で,
憲法学者らによる政治イデオロギーから独立した
純粋に学問的観点からの指摘が最後の灯だった,
となってしまいませんように.
合掌.

そもそも国政は,国民の厳粛な信託によるものであつて,
その権威は国民に由来し,その権力は国民の代表者がこれを行使し,
その福利は国民がこれを享受する.
これは人類普遍の原理であり,この憲法は,かかる原理に基くものである.
われらは,これに反する一切の憲法,法令及び詔勅を排除する.

 日本国憲法 序文より

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ぼくらの民主主義なんだぜ (朝日新書)

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*1:テクニカルな要請として「サンプル数×標本割合≧5」が必要だけど,いまの場合4なのでちょっと足りなかった.

立秋過ぎてなおお仕事

学生はすっかり夏休み気分なわけだが,我々はこれからがひと仕事.
高大連携スクールと教員免許更新講習.
今年も恒例のネタ,といくつもりだったが,
れいの「教科学」で発掘したいくつかのネタを盛り込みたくなった.

↓Genaille-Lucasの計算棒.わざわざミシン目も入れてその場で遊べるようにした.
f:id:okiraku894:20150807170152j:plain:w400,left


このおもちゃの詳細は↓tokidoki.hatenablog.jp

またネイピアの計算盤もやるつもりなのでおはじきを確保.
高校教員らが算数セットのおはじきで遊ぶんだよ.
f:id:okiraku894:20150807170446j:plain:w400,left


で,話の入りはオープンキャンパスで「つかみはOK」的な反応のあった話から.
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そしてもちろん,もう10年以上つかっている「なんちゃって計算機」も投入.
f:id:okiraku894:20150811193343j:plain:w400,left

ま,反応はそこそこだったかな.
そうそうそれと何か見たことある顔だな~っとおもっていたら,
かつて講義をした学生らが10年研修で今回講義を取っていた.赴任して12年だからね.

いずれにしても,教員も生徒も学生も,
リアルに手足を動かしての数学を体験する機会が少な過ぎる.
そんな思いもあっての今回のプログラム.何か残せたかな.

ってわけで,二日連チャンのお仕事終了,今日から休み!
気になっている研究ネタがあるので,お盆はそれに集中.

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おっと,気付けばこんな書き込みが→
今度は冬呑みっすね,五代目の諸君.