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芸は身を滅ぼす?(5) ― Lights-out も作ってみた

はい,シリーズ5つ目.
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これは某若手代数の先生からの希望もあって作ってみた.
何でも教養向けの授業で取り扱うのだそうだ.
これはLights-out という数理パズル.頂点をクリックすると
その頂点自身とそれにつながっている頂点のon/offが同時に切り替わる.
そこで,例えば全部がoffの状態から全部がonの状態にできるか?
といったことを問題にするパズルだ.
数学的には頂点xおよびxにつながっている頂点の全てを Nx と書くことにすれば,
グラフの被覆 {Nx | x∈V} の部分被覆Γをうまくとれば,
各頂点 x∈V がΓで奇数回被覆されるものがとれるか?という問題に他ならない.

もちろん,使ってみた風の動画も撮ってみた.

で,flashが動くなら遊べます↓

うわぁ,もう今週から新年度ガイダンス始まるし,自由な時間もお終いか.

因みに過去のシリーズはこちら.
tokidoki.hatenablog.jp
tokidoki.hatenablog.jp
tokidoki.hatenablog.jp
tokidoki.hatenablog.jp

芸は身を滅ぼす?(4)

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早いもので,このシリーズ(シリーズなのか)も4つ目.
tokidoki.hatenablog.jp
tokidoki.hatenablog.jp
tokidoki.hatenablog.jp

今回は昨年オープンキャンパスで扱ったネタ
「3色カードの数理マジック」をScratch化した.
というより,Scratch自体に動画キャプチャー機能が付いていることに今日気付いたので,
嬉しくなって動画を撮ってみたかったという意味合いが強い.

作っておけば色々な場で使いまわせそうだし,
なにより初年次で早速やってみたいネタだ.
元は本年度卒業のある学生がmodに絡んだ不変量を考えているときに浮かんだらしい.
不変量とパスカルの三角形が自然に現れ,
さらに踏み込めばパスカル三角形に潜む自己相似性も出てくるという,
教材としてはなかなか優秀なネタなのだ.
もう,あちこちで使わせてもらうよ.

↓フラッシュが動く環境なら実際に実験できるよ↓

残念な国(5)―国は人を以て盛なり

OECDの国際教員指導環境調査結果についての記事がちらほら見られたので,
国立政策研究所へ見に行ってみた.www.nier.go.jp
そこにTALIS日本版報告書「2013年調査結果の要約」が置いてある.
あるいはグラフなどで見やすくまとめたOECD国際教員指導環境調査(TALIS)のポイント
のほうが良いかもしれない.
特に最終ページにデータを上げてこの国の現況に対する主張がされていた.

とくにあちこちの記事で取りざたされているのがOECD平均38.3時間/週にたいして,
この国では飛びぬけて53.9時間/週という点だ.
その業務配分,事務業務が重荷なんだろう,と思ってたら,
それよりも課外活動(部活)に時間を吸われている.
調査6項目中5項目がOECD平均を上回り相変わらずな勤勉さがうかがえる.
そして皮肉にも唯一時間の短かった項目が教員の本分たる「授業時間」だった.
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OECD国際教員指導環境調査(TALIS)のポイントから.
こうなってくると,教科教育と課外活動を同一の教員が行うのは
そろそろ諦めたほうが良いのではなかろうか.
課外活動専門の職や何らかの受け皿が本当は必要なんだろうと,
口には出さねど皆思っているのでは?

ま,だけど夢物語なんだろうね,お財布省がこれなんだから.news.tbs.co.jp
3.7万人削減で0.2兆円ほどの「節約」なのかな.
それだったら,シロウト目に「特別会計」どっか削ったらええやん,
とか思って現況を覗いてみた.www.mof.go.jp
およそ200兆円の3/4が社会保障と国債の償還と利子なんだね.
そしてよく見るとここには文科省固有の部分がない.
(法人化前の国立大学だったときはここに特別会計枠があったらしいが.)
でもなぁ,人を育てるほか生き延びる術のない国のはずなのに,
短期的な教育予算の付け方では育たないよね.
大学への予算どうのこうののことを言ってるんじゃないんだ.
教育全体への予算の付け方,これは国家100年の計として
外的状況がどう変わっても頑として子どもたちを育てる予算だけは
安定して確保できる仕組みにしておけなかったものだろうか.
賢い家庭だって未来を見越して教育費の積み立てをどうにかしてするものだろうに.

さて先程の調査の続き.一方でまた,そりゃそうだろうな,という結果も.
なぜならこれまで多くの教員自身が「主体的学び」を経験してこなかったのだから.
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OECD国際教員指導環境調査(TALIS)のポイントから.
となると今すぐできることは,目の前の学生たち,やがて現場に出る学生たちに,
たとえ疑似的・錯覚であったとしても主体的に学んだという経験ができるよう
ささやかでも仕掛けを作ることだ,といつもの主張に戻るわけだ.

某国はその創設時より虎視眈々と覇権を目指して今日に至る.
数年ごとに顔を変えてきた,他国を出し抜くなんてことのできないこの国では,
権謀術数を張り巡らす国にとても対抗できる気がしない.
チェックメイトされる前に人を育てておかなくては.

山は樹を以て茂り,国は人を以て盛なり.
                吉田松陰

教員環境の国際比較 (OECD国際教員指導環境調査(TALIS) 2013年調査結果報告書)

教員環境の国際比較 (OECD国際教員指導環境調査(TALIS) 2013年調査結果報告書)

「主体的学び」につなげる評価と学習方法―カナダで実践されるICEモデル (主体的学びシリーズ―主体的学び研究所)

「主体的学び」につなげる評価と学習方法―カナダで実践されるICEモデル (主体的学びシリーズ―主体的学び研究所)

  • 作者: スー・F.ヤング,ロバート・J.ウィルソン,Sue Fostaty Young,Robert J. Wilson,土持ゲーリー法一,小野恵子
  • 出版社/メーカー: 東信堂
  • 発売日: 2013/05
  • メディア: 単行本
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人を伸ばす力―内発と自律のすすめ

人を伸ばす力―内発と自律のすすめ

サイエンスとしての「教育論」

この頃読んで「へぇ~」ってなった本の紹介.
タイトルだけチラッと見ると「経済力による学力格差」の話かな,なんて思うけどそうじゃない.
「教育経済学」という,社会を計量的に分析してきた経済学の手法を教育の場に適用してみたら,
人々が教育上「良いと思っていること/悪いと思っていること」が案外根拠ないんだよ,
ともすると反対のことをしちゃってるよ,という結果が集まったって話.

「学力」の経済学

「学力」の経済学

教育経済学という発想自体,いかにもアメリカらしいプラグマティズムだけど,
教育評論家や現場教員の「いかにも正しそう」な議論や主張がどうであろうと,
大規模「実験」データが示す結果をバイアス無しに受け止め,科学的な帰結を導く様子は天晴だ.
(教育現場で「(教育)実験」なんてできるのかって思うけど,
 工夫次第で倫理的問題無しで可能なんだとさ.「自然実験」が良い例.)
帯にも載ってしまっているからここに載せても良いと思うけど,端的な結果が,

  • ご褒美で釣っても「よい」
  • ほめ育てはしては「いけない」
  • ゲームをしても暴力的には「ならない」

おやおや特に1番目の話,ここでしばしば(サブリミナルのように)紹介している
「人を伸ばす力」に反するんじゃないの?って思ったんだけどそうじゃなかった.
正確にはご褒美の設定方法次第なのだ,という実験結果であって矛盾しない.
そもそもデシの主張も大規模データから導かれた結果だったのだから.
むしろデシの主張通り,人の「やる気」というものが如何に繊細で損なわれやすいものか,
追加実験をしたような形だった.

人を伸ばす力―内発と自律のすすめ

人を伸ばす力―内発と自律のすすめ

冒頭の本を読み進めてみると教育における「経験論」は特殊事例から導かれたもの,
ということが往々にしてあると分かる.
「偉い人がそう言っているから」「他人の成功体験から言うと」だけで動くと,
どれほど子どもたちをミス・リーディングしてしまうかってことだ.
2001年アメリカで成立した「落ちこぼれ防止法」のなかには「科学的な根拠に基づく」
というフレーズが111回使われているそうだ(p.18).
で,その「科学的根拠」に階級が設定されていて,それが面白い.
ランクの高い順に並べると(p.164),

ランダム化比較実験>非ランダム化比較実験>分析疫学研究>症例報告>専門家の意見や考え.

つまりアメリカの教育政策において専門家の意見や考えは「科学的根拠」としては弱い,
と言っているわけだ.教育においてもモノを言うなら「実験データで示せ」ということだろう.
というより,一専門家のフィルターを通る前の「素の結果」を皆の前に提示して,
皆が同一の見方に行き着けるのであれば「科学的根拠としよう」ということなのだろう.

もちろん著者は日本人なので,日本における教育政策の「非科学性」を嘆いておられる.
たとえばつい先日公表された全国学力テストについて.
県別順位といったものも,その県の家庭の資源(家庭や地域の経済力,利便性等)が
学力に与えている影響を取り除いたうえで比較しないのなら,
単に子どもの家庭の資源の順位を表しているにすぎない可能性がある,と(p.120).

もしも順位を公表するなら,学校名だけでなく,その学区の生活保護率,
就学援助率,学習塾等事業者の数や売り上げなど,
家庭の資源を表す情報も紐づけて公表すべきです.
 中室牧子/「学力」の経済学 p.125 より

こんな話を知った後に「うちの県の順位が上がった/下がった」なんていう知事会見を見ると,
1%の視聴率変動に右往左往するテレビ局を見ているようで,何とも恥ずかしい限り.
せっかく税金を投じて行っている全国テスト,しかし「個人情報」云々で紐付けられず,
結果,科学的根拠として使い物にならないデータだけが出てくる政策に,
著者が隔靴掻痒の思いをされている様子がいたるところに見受けられた.

あれぇ,そういえばどこぞの大学の授業アンケートや教務データもそんな感じだっけ...(:P

立秋過ぎてなおお仕事

学生はすっかり夏休み気分なわけだが,我々はこれからがひと仕事.
高大連携スクールと教員免許更新講習.
今年も恒例のネタ,といくつもりだったが,
れいの「教科学」で発掘したいくつかのネタを盛り込みたくなった.

↓Genaille-Lucasの計算棒.わざわざミシン目も入れてその場で遊べるようにした.
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このおもちゃの詳細は↓tokidoki.hatenablog.jp

またネイピアの計算盤もやるつもりなのでおはじきを確保.
高校教員らが算数セットのおはじきで遊ぶんだよ.
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で,話の入りはオープンキャンパスで「つかみはOK」的な反応のあった話から.
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そしてもちろん,もう10年以上つかっている「なんちゃって計算機」も投入.
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ま,反応はそこそこだったかな.
そうそうそれと何か見たことある顔だな~っとおもっていたら,
かつて講義をした学生らが10年研修で今回講義を取っていた.赴任して12年だからね.

いずれにしても,教員も生徒も学生も,
リアルに手足を動かしての数学を体験する機会が少な過ぎる.
そんな思いもあっての今回のプログラム.何か残せたかな.

ってわけで,二日連チャンのお仕事終了,今日から休み!
気になっている研究ネタがあるので,お盆はそれに集中.

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おっと,気付けばこんな書き込みが→
今度は冬呑みっすね,五代目の諸君.