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残念な世界(1)

あれがリバティー
ユートピアのパロディー

    「パレード」の一節 / 平沢 進

https://www.newsweekjapan.jp/watase/assets_c/2020/10/RTX7YVPV-thumb-720xauto-216833.jpg

www.newsweekjapan.jp
僕らはいま,壮大なパロディーを見ている.
民主主義のパロディーを.

大国の落日はともかく,振り返ってこの国の民主主義はもとからパロディーだった.
欧米のパロディーから抜け出すことはなかった.
恐怖のパレードが過ぎ去った70年ぐらいでは,市民は育たなかった.
「モリ・カケ・サクラ」もどこ吹く風,ヤンキー総理の去り際は大円団だったものね.

https://pbs.twimg.com/media/EhSIZ2IVkAMAHtO?format=jpg&name=large

しかし,いまや世界中至るところで,「民主主義」は人類にとってパロディーに過ぎなかったことを証明しつつあるね.

そんなこんな考えてるところへ,こんなオチが流れてきた.


アカウントが "@realDonaldTrump" というところから笑わせてくれる.
そうわざわざ言わねばならぬほど,あんたの存在自体が Fake なのかい.

努々 省みるな
手遅れゆえ

    「パレード」の一節 / 平沢 進


【平沢進】パレード(歌詞付き)~映画「パプリカ」~

残念な国(11)―「私たちは,複雑さに耐えて生きていかなければならない」

なんだかこの年末年始のような雰囲気は,改元に伴うものであるのだけど,
こうして雨模様が続くのは,陛下が水の専門家だからなのでしょうか.

多くの日本人が「新しい時代」を期待し,気持ちを新たにしている.
どこか昭和の後始末に終始した感のある時代に,
そして縮みゆく経済の中,再びこの国が閉塞感に覆われている昨今に,
あるいは区切りをつけたい,という深層にある願いも込められているのかもしれない.

前陛下の退位にあたって,ちらりとタイトルの言葉を久しぶりに最近メディアで耳にした.
そうだ,美智子様がその昔に発せられた,あの言葉,IBBYにおける基調講演からの一節だ.

そして最後にもう一つ,本への感謝をこめてつけ加えます.
読書は,人生の全てが,決して単純でないことを教えてくれました.
私たちは,複雑さに耐えて生きていかなければならないということ.
人と人との関係においても.国と国との関係においても.

第26回国際児童図書評議会(IBBY)ニューデリー大会(1998年)基調講演
「子供の本を通しての平和ー子供時代の読書の思い出ー」から

www.kunaicho.go.jp

「複雑さに耐えるということ」
いま風に言えば,ダイバーシティー,多様性を受け入れるということ.
価値観の違いを互いに乗り越え,存在を認め合うということ.
けれど多くの国々の舵取り役たちは,その複雑さに耐えられない,
あるいはあえて耐えることをせず,単純に割り切ることを進んで選んでいる.
tokidoki.hatenablog.jp

そしてご多分にもれず,この国も.
tokidoki.hatenablog.jp
「こんな人たちに皆さん,私たちは負けるわけにはいかない」と,
同じこの国に住む日本人をいとも簡単に切り捨ててしまえる政治家トップの単純さ,
目の眩むような複雑さを孕んだこの世界で,
「この道しかない」と断言できてしまう単純さは,
やはりこの先も大方の日本人に支持され続けるのでしょうか.
その結果,そうした単純化のしわ寄せを我々はこの先も甘受し続けねばならないのでしょうか.
我々は「しわよせ」ではなく「しあわせ」を望んでいるはずなのだけど.

この国を覆っている閉塞した空気.
かつてのような,あの皆が同じ方向を向くよう仕向けられる空気は,
「和」をモットーとする国民性に簡単に馴染んでしまう.

どうか,この世界の複雑さを都合よく覆い隠してしまいませんよう,
多様な存在が多様なままで居られる国でありますように.

橋をかける (文春文庫)

橋をかける (文春文庫)

残念な国(10-c)―それは地球市民のための憲法だった

日本会議的改憲へのアリバイ作りのための選挙が終わった.
案の定の結果は平成版大政翼賛会発足の前夜祭でもあろう.
早速,野党勢力の発言力を抑え込む動きが始まった.
与党と政府が一体であるような仕組みにおいてこそ,
意見を違える人たちへのより丁寧な対話(断じて「丁寧な説明」ではない!)が必要だというのに.
www.asahi.com

麻生君など,勝てたのは北朝鮮のおかげだ,などと仰っておられるそうで.
まぁ安倍君とその仲間たち同様,調子に乗ってつい本音を語ってしまうイイヤツなのかもしれない.

「明らかに北朝鮮のおかげもありましょうし,
いろんな方々がいろんな意識をお持ちになられたんだろう.
特に日本海側で遊説をしていると,つくづくそう思った.」
2017/10/26 議員パーティー

www.sankei.com

しかしこれでまた,聞かれたことに答えず,聞かれてないことを滔々と喋る御スガタが拝めますね.
そうそう,「枯れ草の山に火を点けたかのようにぺらぺらと」って誰か書いてたっけ.
あ,野党の質問時間短くなるからそれも減ってしまうか.

 この数年間,安倍晋三という人の印象はただただ喋(しゃべ)るということだった.
枯れ草の山に火を点(つ)けたかのようにぺらぺらぺらと途切れなく軽い言葉が出てくる.
対話ではなく,議論でもなく,一方的な流出.機械工学で言えばバルブの開固着であり,
最近の言い回しを借りればダダ洩(も)れだ.
 安倍晋三は主題Aについて問われてもそれを無視して主題Bのことを延々と話す.
Bについての問いにはCを言う.弁証法になっていないからアウフヘーベンもない.

www.asahi.com

ダダ洩れ.あぁ,そうだったね.
あれから何度も漏れてたけど,"The situation is under control."と言いきってたもんね.
www.kantei.go.jp



選挙のとき決して安倍君は改憲話に決して触れなかったけど,実際は日本会議的改憲への布石.
もちろん改憲そのものはすべきところはすべきだろう,と改めて思っている.
実質的に立法と行政が一体となってしまっているこの国において,
枝野君の云う「解散権制約」はもっともな点だ.
www.sankei.com
しかし,何より日本会議的改憲だけは何としても避けたい.
実質的に日本会議改憲草案である自民党改憲草案では「個人」から「個」を奪う,
つまりは個人の尊厳を保障しない.
大日本帝国憲法を彷彿とさせるこの変更が何より恐ろしい.そんなことをちょっと前に書いた.
tokidoki.hatenablog.jp
そしてそれに呼応するように憲法前文が書き換えられる.実に軽い,稚拙な前文に.
tokidoki.hatenablog.jp
なぜなら,現行憲法の根幹である三原則を書き換えるからであり,
「個人」の「個」を取りたがるのは明治時代の家父長制を復活させたいからに他ならない.
それが日本人本来の姿なのだと信じて疑わない人たちによる案だから.

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「あたらしい憲法草案の話」より

あたらしい憲法草案のはなし

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安倍君は現行憲法を「みっともない」と言い切る.
だからこそ,立て続けに「特定秘密保護法案」や「テロ等準備罪」が
憲法など無きが如き傍若無人なやり口で成立できてしまった.
www.asahi.com
安倍君は例の軽口で「押し付け憲法」と言い切る.
そして政治家が何かを言い切るときこそアヤシイことは"under control"発言を思い出せばいい.

GHQ草案には「平和」の文字は無かった.
戦力不保持という消極的原案に対し,先人たちの並々ならぬ尽力によって
「国際平和を誠実に希求」するという形での積極的平和主義へと漕ぎ着けたのだった.
他ならぬ日本人自身の手によって確かに作られた憲法なのであった.
www.nhk.or.jp
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現行の憲法前文は理想論だ.しかしそれはとてつもなく偉大な理想論だ,と思う.
日本国民に対しての進むべき道が書いてある,というより
もっと全地球的な,地球市民が目指すべき道が書いてあるのだ.
そういった意味で現行憲法は世界でもなかなか特異なものだとも思う.
このゴツゴツとした,訥々とした,しかし誠実な前文は,
いつの日か世界が共有してしかるべきもののように思うのだ.
もう一度書くけれど,日本会議草案の「学級目標憲法」とは,
その広さと奥行と深さにおいて全く次元が違うのだ.
tokidoki.hatenablog.jp

だから安倍君の云う「ウツクシイ クニ」は「ニクイシ クツウ」,まっぴらごめんなんだよ.

新しい国へ 美しい国へ 完全版 (文春新書 903)

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日本国憲法 前文


日本国民は,正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し,
われらとわれらの子孫のために,諸国民との協和による成果と,
わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し,
政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し,
ここに主権が国民に存することを宣言し,この憲法を確定する.
そもそも国政は,国民の厳粛な信託によるものであつて,その権威は国民に由来し,
その権力は国民の代表者がこれを行使し,その福利は国民がこれを享受する.
これは人類普遍の原理であり,この憲法は,かかる原理に基くものである.
われらは,これに反する一切の憲法,法令及び詔勅を排除する.
日本国民は,恒久の平和を念願し,
人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて,
平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して,
われらの安全と生存を保持しようと決意した.
われらは,平和を維持し,専制と隷従,圧迫と偏狭を
地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において,名誉ある地位を占めたいと思ふ.
われらは,全世界の国民が,ひとしく恐怖と欠乏から免かれ,
平和のうちに生存する権利を有することを確認する.
われらは,いづれの国家も,自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて,
政治道徳の法則は,普遍的なものであり,
この法則に従ふことは,自国の主権を維持し,
他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる.
日本国民は,国家の名誉にかけ,
全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ.

もう一度書いておこう.

 山は樹を以て茂り
 国は人を以て盛なり
       吉田 松陰

個人の存在根拠を国が認めないのなら,やがてその国は亡ぶと思う.

残念な国(10-b)―我々「こんな人たち」のレジスタンス

確か,中学生だったか高校生だったかの頃に「1984年」を読んだ.
ディストピア小説の代表だろう.

1984年 (ハヤカワ文庫 NV 8)

1984年 (ハヤカワ文庫 NV 8)

個人の表現の自由はおろか,極めて内的な心情にすら政府が介入する世界.
そもそも批判的な思考すら起こさせないよう,政府がNewspeakなる人造言語を普及させている.
さながら漏れ聞こえてくる朝鮮民主主義人民共和国の市民生活だったり,
「気付いてしまった人たち」を弾圧する中華人民共和国の行き着く先のようであり,
かつての戦時中の,市民レベルで互いを密告をし合っていた大日本帝国のようである.

戦争は平和である (WAR IS PEACE)
自由は隷属である (FREEDOM IS SLAVERY)
無知は力である (IGNORANCE IS STRENGTH)

「Big Brother」率いる一党支配の世界.これがその党のスローガンである.
考えれば考えるほど分からなくなる言葉なんだが,
つまるところ,考えることを止めさせる言葉なんだ.
考えちゃいけない,ただただ熱狂的に唱和するのだ.
ああ!ちょっと前にもそんな言葉が某大国で流行ったっけ!!

We Will Make America Great Again!



さてさて極めて幸いなことに,まだこの国では自由にモノが言える.
そう,目立たない程度に発言する限りは.

そしてまだ幸いなことに,最高権力者の,
「人間らしく,ついやっちまった」無様な御スガタを拝む機会がある.

「こんな人たちに皆さん,私たちは負けるわけにはいかない」

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「自由は隷属」であり「無知は力」であるあのディストピアにおいては,
確かに"何も感じず,考えない"人たち,
あるいは"感じること,考えることをやめた"人たち,
体制に身の全てを委ねた人たちにはユートピアなのかもしれない.
だからそのユートピアを蝕む,"感じ考えてしまうメンドクサイ人たち"を
鬱陶しく思うのだろうなぁ.
例えばネトウヨによるパヨク叩きは,そういうことなんだろうと.
権威者である市民が思考停止して権力者に隷属するのは如何なものかと思うのだけどね.



さて,かく云う私は「こんな人たち」側の人間である.
本日投開票される結果如何によっては平成版大政翼賛会が生まれかねない.
そうなったとき一番危惧しているのが日本国憲法の「前文」が書き換えられてしまうことだ.
改憲論議でふつう皆が注目する九条のほうではなくて,だ.
あるいは,第十三条において,「個人」を「人」に書き換えてしまうことだ.

日本国憲法 第十三条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。


自民党改憲草案 第十三条
全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない

この変化が,九条論議よりも遥かに差し迫った身近な危険な動きなのだということを
一体どれくらいの人が分かっているのだろう.
「個人」から「人」へ.たった一文字なんだけど,この変化がとても恐ろしい.
なんなら,「人」と書かれていたものが「ヒト」に変わったらどうだろう?
「個人」→「人」→「ヒト」.
個々人が持つ精神性が次第に失われ,単なる生物学的な「分類」へと変わっていく.
一人の人間としての尊厳というものが失われていくじゃないか.
そして実際それと呼応するように条文の後半において
「公共の福祉に反しない限り」から「公益及び公の秩序に反しない限り」へと,
「個人」の領域を制限する文言へと変わっているではないか.
そんな新しい憲法のもとで何がおこるだろうか?とちょっと想像してみる.

かつて「非国民」という言葉によって物思う人たちが弾圧されたように,
ユートピア側の人たちが掲げる「他人の迷惑」という錦の御旗のもと,
感じ考えてしまう人たちが社会的に弾圧されてしまうことだろう.
というのもユートピア側の人たちは多様性のある社会をお好みではないのだから.

あれ,まてよ."ユートピア側"なんて言葉を使ったんじゃ,
「こんな人たち」と言ってる安倍君と変わらないじゃないか!
そうだ,右や左なんて言ってる場合じゃない,我々は前に進まねばならないのだ!

「党を立ち上げたのは多くのみなさんに『枝野、立て』と背中を押していただいたからだ。主権者の声が立憲民主党を作った原動力だ。『右』や『左』は20世紀の古い考え方だ。上からの政治か、草の根の声に寄り添った本当の民主主義かが問われている。右でも左でもなく前へ進む新しい選択肢を掲げたい。一緒に進んでほしい。私にはあなたの力が必要だ。」
立憲民主党・枝野幸男 街頭演説より

www.sankei.com

tokidoki.hatenablog.jp

あたらしい憲法草案のはなし

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Art Award IN THE CUBE 2017 @ 岐阜県美術館

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ふらっと行ってきました,Art Award IN THE CUBE @ 岐阜県美術館.
art-award-gifu.jp
審査員には(私が勝手に)同士だと思っている高橋源一郎さんや
日々,折々の言葉で(勝手に)お世話になっている鷲田清一さん,
初年次演習ではかつて(勝手に)アレンジして遊んだことで(勝手に)お世話になった
逆シミュレーション音楽の三輪眞弘さんがいることも気になって行ってみた.
tokidoki.hatenablog.jp

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応募者らはこの与えられたCUBEの中に作品を作るという寸法で,何でも今年が最初の試みとのこと.
古い世代はCUBEというとあの映画を思い出すのだけどね.

CUBEキューブ Blu-ray

CUBEキューブ Blu-ray

では,中を見ていこう.
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三枝 愛「庭のほつれ」/O JUN賞.
美術館庭にぽつんと建てられたCUBE.何があるかと覗くところんと木が転がってる.
東日本大震災からシイタケ農家に必要な原木が不足したこと,
それによって生活の風景が一変したこと.
情報の激流によって薄皮でしか物を考えなくなった社会で,
敢えて考えるために立ち止まる人たち.
現代アートとはそういった人たちが居る場所でもあるのだよね.

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安野 太郎「THE MAUSOLEUM ー大霊廟ー」/高橋源一郎賞.
館内に入ると何やら不協和音がブーブカブーブカ聞こえてくる.
その発生源がこれ.大小さまざまなリコーダーがポンプから送られる空気で鳴っている.
人類滅亡後,永遠に弔いを続けるロボットという想定らしい.
しかし,こんなデカいリコーダーもあるんだなぁ,と別の角度で感心.

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柴山 豊尚「ニョッキ(如木)2017」/十一代大樋長左衛門賞.
板を重ねてそれを削ってできた,どこか別の惑星の景色のような空間.
この中で寝そべって想像すると楽しそうだ.

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森 貞人「Mimesis Insect Cube」/中原 浩大賞.
ワサワサワサッとガラクタで作られたたくさんの昆虫.「ガラクタ虫」と呼んでるそうだ.
使い古された道具たちがこうして虫として生まれ変わった.
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で,ひょいと目をやると何やら人の下半身が上の方で垂れ下がってる!
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何々と中を覗くと人が倒れてる,っていうか手がカタツムリ!
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耳のないマウス「移動する主体 (カタツムリ)」/三輪 眞弘賞.
小さな子が見たら夢に出てきそうな作品.これちょっとずつ動いてるんだ.
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壁に貼りついてるヒトの指先だって,カタツムリの目のように動いてた.
こう,こっちに寄って来るとうわ~ん,てなるよ↓
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あぁ,あれだ,ヒトがどんどんカタツムリになっていく
伊藤 潤二のマンガ「うずまき」を思い出したよ.

うずまき (2) (スピリッツ怪奇コミックス)

うずまき (2) (スピリッツ怪奇コミックス)

ちょっと落ち着こか.
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宮原 嵩広「Missing matter」.
CUBE全体に敷き詰められた「アスファルト」,ただそれだけだ.
確かにアスファルトのニオイが充満して余りそこに立っていたくない感じだった.
やがて枯渇する化石燃料,大木や自然に感じる神性と同じ思いを
アスファルトに抱く時代がくるかもしれない,ってなことらしい.

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三木 陽子「Conduit(導管)」.
そのとき全く分からなかったのだけどあとから調べたら陶芸作品とのこと.
建物の裏側なんかにありそうな導管なんだけど,これが蔓のように壁にまつわりつき,
したたかな生き物の様でもあり,
あぁ,うちの庭の草取りしなきゃなぁ,なんて思ったり.

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松本 和子「透明の対話」.
どこか懐かしい感じはフレスコ画という表現方法にあるのだろうか.
朝の透明さがなんだか涼しかったりした.

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ミルク倉庫+ココナッツ「cranky wordy things」/大賞.
寝言を言っている人の動画やら,突然音を立てるガンガンやら,
勝手にくるくる回り続ける机の上の小物.
その場は直ぐに立ち去ったが,家に帰ってから解説を読んだ.

物質という有限性を凌駕する何かしらに憑かれ、一時の『身体』がたち現れる

ああ,なるほど,だから何だかオカルティックだったのか.
そういえばケン・ウィルバーの「空像としての世界」を読んだとき,
僕らって要するに精神の受信機なんだ,と思ったのだっけ.
そう,僕らの身体はいつか土に還るまでの借り物なんだってことさ.

空像としての世界―ホログラフィをパラダイムとして (1984年)

空像としての世界―ホログラフィをパラダイムとして (1984年)

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谷本 真理「この部屋とダンス」/田中 泯賞.
一見,現代アートにしばしばありがちなダダイズム的な何か,かと部屋を覗く.
田中 泯賞を取ったとのこと,そしてタイトルには「ダンス」.
あれ,確かに部屋の落書きは何か躍った後のような,全てのものが躍動しているような.
できればタイトル見ないでそれを感じ取りたかった.ちょいと悔しいような.

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中村 潤「縫いの造形」.
CUBE全体が「縫う」という行為を表現していた.
ああ,できればその「縫う」行為の中に埋もれてみたかったかもしれない.

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堀川 すなお「モノについて」.
実は入ったところに中が見えない箱が二つ置いてあり,
そこに手を入れて入っているものの様子を感じて,それから作品を見ると面白い.
子どもたちに同じことをしてもらって,感じたことを言葉にして,
その情報を元に再びデザインするといった行為が展開されていた.
とはいえ,かなりデザインが繊細で美しかったため,
だから子どもの言葉とどれくらい対話が行われて描かれたのだろうか,
と,かえって訝ってしまう自分がいた.

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水無瀬 翔「DEMO DEPO イン・ザ・キューブ支店」/鷲田 清一賞.
後でじっくり解説を読んで,なるほど鷲田さんが選びそうな話だ,と思った.
ほら,例えば本来家庭が受け持っていた躾を始めとする様々な役割を
今どきの人たちは学校にアウトソーシングしているでしょ.
そのくせきちんと行われていないと学校を非難するでしょ?

この作品,本来どうしても社会に主張すべきことがあって
それを社会に知ってもらうために行うはずの「デモという行為」をアウトソーシングする,
っていうブラックジョークなわけだ.
しかもデモするのは人間ではなくロボット.
分業化が徹底的に進んで一生の営みがどんどんアウトソーシング化して,
果たして僕らのどこに僕らの人生があるんだろうね.
気付けばYahoo!知恵袋に課題の質問をする学生達ってのは,
学習自体もアウトソーシングしているわけで,
そんな風に上澄み液だけ啜って終わる人生って,楽しいのかね.

↓アハアハアハ,っていう機械的な笑いもアウトソーシングですか.
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さてさて,しかしこの日をわざわざ選んで岐阜県美まで行った理由,それがこの作品↓
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平野 真美「蘇生するユニコーン」.
この作品,ただのぬいぐるみではない.
架空の動物であるユニコーンを解剖学的見地を元に,
骨格から内臓,筋肉,表皮まで全てを実際に作ってあるのだ.
かつ,作家さん当人の話によれば口から肛門まできちんと一続きの仕組みにしてあり,
心臓も心房心室を作って外部からの「輸血」によって循環するように作り込み,
また口に伸びる管からは空気が送り込まれ,
それは確かに「肺」にとどけられているとのこと.
いや,実際胸のあたり,静かに上下しているのだ.
岐阜大獣医学科に足を運び獣医から学び,リアリティーを追及したとのこと.
本当は解剖にも立ち会う予定だったそうだが,
鳥インフルエンザ騒ぎで獣医学科がてんやわんやで話が流れてしまったのだそうだ.

しかし今回,その平野さんが会場に現れ「胃の交換手術」を行うのである.
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↓赤いのが,交換前の「胃」.
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ラテックス製の胃は随分と弾力性があった.
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↓うわぁ,随分と大胆に胃を押し込んでいくよ.
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↓右の黄色いのは取り出された方の胃.素材が違うのだそうだ.
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手術の最後までは見届けなかったのだけど.
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こうして思うのは,モノを一生懸命作る人というのは,やはり美しいということ.
ってお前,何を撮りに行ってるんだよ,というツッコミは無しの方向で.
いずれもILCE-6000+(SEL1670ZF4.0,SEL30F3.5Macro), Lightroomにて現像

おっと,そうそう,もちろん帰りの電車では高橋源一郎さんの本を読んでたよ.

丘の上のバカ ぼくらの民主主義なんだぜ2 (朝日新書)

丘の上のバカ ぼくらの民主主義なんだぜ2 (朝日新書)

実質日本会議である改憲勢力が2/3を超え維新を含めた大政翼賛会化してしまった国会と,
そしてその日暮らしのごく身の回りのことしか関心を持たない
羊よりも大人しい多数の同調主義者たち(これを「羊たちの沈没」という).
ひとたびこの国でテロが起これば,
あっという間に九条の精神は不安と怒りに呑みこまれてしまうだろうし,
それにかこつけて「個人」を「人間という動物」へと格下げする,
小学生の読書感想文にも劣る,しょーもない日本会議草案に流れてしまうのだろうな.
何てことあんまり書いていると,現代版治安維持法(テロ等準備罪)に引っかかったりして.
あたらしい憲法草案のはなし

あたらしい憲法草案のはなし

  • 作者: 自民党の憲法改正草案を爆発的にひろめる有志連合
  • 出版社/メーカー: 太郎次郎社エディタス
  • 発売日: 2016/07/02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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