ラテン語で「人間の尊厳のために」,だそうだ.
たまたま前を走っていた学園バスに掲げられていた言葉.
人間一人一人に,何人も決して侵すべからざる尊厳が備わっている
という世界観だ.
そうならばまた,人間一人が形成されていく過程で,
その人の成長に携わった沢山の人々の尊厳も
その一個人の尊厳に積み重なっているともいえるかもしれない.
だから誰かを否定するとき,
あるいはコントロールしようとするとき,
その当人の尊厳のみならず,
ともするとその人の背後に居る沢山の人々の尊厳をも
脅かしているのかもしれない.
それと同時に,
自分の尊厳と自分を育ててくれた人たちの尊厳をも
損ないかねないことを,銘記しておいたほうがいい.
そしてかく云う自分は,しばしばこのことを忘れる.
忘れて他人の,ひいては己の尊厳を踏みにじっていることに
ふと気付いて凹む.
しかし,こうして気付けることならまだ良いのかもしれない.
仕組みとして,社会システムとして,
あるいは誤った善意や,バランスを欠いた信念によって,
当人がそれと意識せず相手の尊厳を脅かしている,
また当の相手も尊厳が脅かされていることに気付いていないという場合,
とても深刻な事態となる.
なにより恐ろしいことは,
しばしば教育に携わる者がこのシステム上の罠に陥りやすいことだ.
特に「授業がスムーズに進んだ」と感じられるときに.
今日の仕事が,学習者を真の意味で自律的な学びへと誘えただろうか?
学習者の学びへの内発的動機を奪うことになってないか?
学習者の学びを教育が侵害してはいないか?
我々教育に携わる者が戦わねばならない本当の相手は
まさにここに潜んでいる.
- 作者: エドワード・L.デシ,リチャードフラスト,桜井茂男
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