遊び tokidoki 仕事

数学と音楽と教育と遊び

| おしごと - きょういく - がくせい - ゼミ - イベント | すうがく - おんがく - 数理音楽 - DTM - かがく - scratch
| Art - photo - おきにー - Tips - ものもう - あれこれ | About - Top

動機づけの内在化への新たな挑戦

プログラミングの講義はずっと担当してきたが,
それを学ぶ意義も有効性もどうも伝わらずに終わってきた.
(というのもその後の講義に活かされることもほとんどなく,
かつ卒論に使う学生もごく少数なので.)
この頃は「そんな講義あったっけ」という学生も現れてきた.
如何に彼らにとって異物感たっぷりに受け止められてきたかがよく分かる.

さて,そんな反省もあって,十年来の講義遺産を全て投げ捨て,
新たな道具を採用して一から講義を作り直している.
まぁそのおかげで土日はほぼその作業でつぶれる.
その道具とは科学教育者でもあるMITのMitchel Resnick*1の提案するScratchだ.

子供向けに開発され,ちょうど子供たちがブロックを積み上げて何かを作るが如く,
プログラムを組んでいけるようにしたフリーなプログラミング環境である.
もちろん以前から知っていたのだが,さすがに飛び道具感がたっぷりで,
つまり見かけが入りやすく,その分講義として「出落ち」になりかねないのでは,
(はじめはのめり込むかもしれないが,すぐに飽きるのでは?)
と敬遠してきたのだが,いよいよ背に腹はかえられないと今期から採用した.

いやいやどうして.何より自分自身がのめり込んでいる.
オモチャのようなことしかできないだろうと高をくくっていたが,
(実行画面のサイズが固定なことを除けば,)
十分なプログラミング環境を提供してくれる.
そして初心者にとって高い壁となるプログラム言語の「文法を憶える」という作業が,
ブロックをはめていくだけの作業に代わるため,
憶えるよりも先に視覚的に仕組みが把握でき,直感的に分かるようになるのだ.
つまりアルゴリズムそのものに初めっから直感的に触れられる.
「プログラムを作って」→「実行」ではなく,「実行したままでプログラムが組める」ので,
今自分がしていることがリアルタイムに反映され,さらに壁が低くなる.

とりあえず一クラス講義,やってみた.
目の前で自分の命令したとおりにキャラクターが動く.
あるいは意図したとおりに動かないと,「動かしたい」という強い内発的動機から,
学生は試行錯誤を始める.
そう,まさにこれがここ数年やらせてみたかった学生の知的運動なのだ.
もちろんこれで講義が上手くいきそうなどと騙されたりはしない.
いつこの「仮の」内発的動機付けから冷めてしまうか分からないからだ.
彼らにとって丁度いい,初めは外発的でもすぐに内在化できるワークを毎回準備せねば,
瞬く間に彼らの知的好奇心の灯は消えてしまうだろう.
それほどまでにこの頃の学生らの知的好奇心は脆弱なのだ.

さて,このScratch.どんなものが作れるかと,初回講義用にデモゲームを作ってみた↓

ゲーム"Cat & Mr.G" Ver. 2014/10/05 (By はしのすけ)

何やってるんだ,と思われるかもしれない.
実際,こちらが真剣に教材を作れば作るほど,遊んでいるようにしか見えない.
う~ん.それがこの道具の最大の欠点かもしれない.
実際,↓こんな感じだし.
f:id:okiraku894:20141026150057j:plain

人を伸ばす力―内発と自律のすすめ

人を伸ばす力―内発と自律のすすめ

*1:そういえばTEDでもその素晴らしいアイディアを披露してくれた.