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残念な国(10-b)―我々「こんな人たち」のレジスタンス

確か,中学生だったか高校生だったかの頃に「1984年」を読んだ.
ディストピア小説の代表だろう.

1984年 (ハヤカワ文庫 NV 8)

1984年 (ハヤカワ文庫 NV 8)

個人の表現の自由はおろか,極めて内的な心情にすら政府が介入する世界.
そもそも批判的な思考すら起こさせないよう,政府がNewspeakなる人造言語を普及させている.
さながら漏れ聞こえてくる朝鮮民主主義人民共和国の市民生活だったり,
「気付いてしまった人たち」を弾圧する中華人民共和国の行き着く先のようであり,
かつての戦時中の,市民レベルで互いを密告をし合っていた大日本帝国のようである.

戦争は平和である (WAR IS PEACE)
自由は隷属である (FREEDOM IS SLAVERY)
無知は力である (IGNORANCE IS STRENGTH)

「Big Brother」率いる一党支配の世界.これがその党のスローガンである.
考えれば考えるほど分からなくなる言葉なんだが,
つまるところ,考えることを止めさせる言葉なんだ.
考えちゃいけない,ただただ熱狂的に唱和するのだ.
ああ!ちょっと前にもそんな言葉が某大国で流行ったっけ!!

We Will Make America Great Again!



さてさて極めて幸いなことに,まだこの国では自由にモノが言える.
そう,目立たない程度に発言する限りは.

そしてまだ幸いなことに,最高権力者の,
「人間らしく,ついやっちまった」無様な御スガタを拝む機会がある.

「こんな人たちに皆さん,私たちは負けるわけにはいかない」

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「自由は隷属」であり「無知は力」であるあのディストピアにおいては,
確かに"何も感じず,考えない"人たち,
あるいは"感じること,考えることをやめた"人たち,
体制に身の全てを委ねた人たちにはユートピアなのかもしれない.
だからそのユートピアを蝕む,"感じ考えてしまうメンドクサイ人たち"を
鬱陶しく思うのだろうなぁ.
例えばネトウヨによるパヨク叩きは,そういうことなんだろうと.
権威者である市民が思考停止して権力者に隷属するのは如何なものかと思うのだけどね.



さて,かく云う私は「こんな人たち」側の人間である.
本日投開票される結果如何によっては平成版大政翼賛会が生まれかねない.
そうなったとき一番危惧しているのが日本国憲法の「前文」が書き換えられてしまうことだ.
改憲論議でふつう皆が注目する九条のほうではなくて,だ.
あるいは,第十三条において,「個人」を「人」に書き換えてしまうことだ.

日本国憲法 第十三条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。


自民党改憲草案 第十三条
全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない

この変化が,九条論議よりも遥かに差し迫った身近な危険な動きなのだということを
一体どれくらいの人が分かっているのだろう.
「個人」から「人」へ.たった一文字なんだけど,この変化がとても恐ろしい.
なんなら,「人」と書かれていたものが「ヒト」に変わったらどうだろう?
「個人」→「人」→「ヒト」.
個々人が持つ精神性が次第に失われ,単なる生物学的な「分類」へと変わっていく.
一人の人間としての尊厳というものが失われていくじゃないか.
そして実際それと呼応するように条文の後半において
「公共の福祉に反しない限り」から「公益及び公の秩序に反しない限り」へと,
「個人」の領域を制限する文言へと変わっているではないか.
そんな新しい憲法のもとで何がおこるだろうか?とちょっと想像してみる.

かつて「非国民」という言葉によって物思う人たちが弾圧されたように,
ユートピア側の人たちが掲げる「他人の迷惑」という錦の御旗のもと,
感じ考えてしまう人たちが社会的に弾圧されてしまうことだろう.
というのもユートピア側の人たちは多様性のある社会をお好みではないのだから.

あれ,まてよ."ユートピア側"なんて言葉を使ったんじゃ,
「こんな人たち」と言ってる安倍君と変わらないじゃないか!
そうだ,右や左なんて言ってる場合じゃない,我々は前に進まねばならないのだ!

「党を立ち上げたのは多くのみなさんに『枝野、立て』と背中を押していただいたからだ。主権者の声が立憲民主党を作った原動力だ。『右』や『左』は20世紀の古い考え方だ。上からの政治か、草の根の声に寄り添った本当の民主主義かが問われている。右でも左でもなく前へ進む新しい選択肢を掲げたい。一緒に進んでほしい。私にはあなたの力が必要だ。」
立憲民主党・枝野幸男 街頭演説より

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