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あいちトリエンナーレ2019―第1次調査 県美編

さてさてあれから3年,ようやくまた現代アートに触れる祭典がやってきた,あいちトリエンナーレ2019.
aichitriennale.jp

今回は残念なことに開催とほぼ同時に,ネトウヨを始めとする日本会議系の方々の妨害によって一部の展示が中止と相成った.
まぁ,なんといっても時期が悪すぎる,時期が.
www.asahi.com
そもそもキュレーターが津田大介氏に決まった数年前から予測できたことではあったし,中止前日に河村君が騒ぎ始めたのを見て,これはすぐに中止になると肌で感じたので次の日早速飛んで見に行った.

そして,間に合った.

きな臭いことはさておき,今年も楽しんでいこう.
ただ,前述の理由もあって,ちょいと急ぎ足での調査.
家に戻ってパンフレットを見てみると色々と見落としているものがあることに気づいた.
それと毎度のごとく,現代アートものは写真OKなのが嬉しい.
今回はいずれもSONY α6000(ILCE-6000)+SEL1670ZF4.0.

(県美A-35)Pia CAMIL/ステージの幕
なんでもバンドTシャツの物々交換で手に入れたもので作ったんだそうだ.
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(県美A-03)Amanda MARTINEZ/欲望の構造
発泡スチロール的な素材による作品.
3Dプリンタで作ったのかな,とはじめは思ったがそうではないらしい.
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(県美A-06)Ugo RONDINONE/孤独のボキャブラリー
多分,今回一番目立つ作品.
みな眠りこけているようにも見えるが,よく見ると皆ちょっとずつ表情が違う.
HPの紹介では,45体のピエロそれぞれに表している行為で名前がついているとのこと.
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(県美A-07)Claudia MARTÍNEZ GARAY/・・・でも、あなたは私のものと一緒に
ペルー古代文明の辿った悲哀.
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(県美A-09)石場文子/「2と3、もしくはそれ以外(わたしと彼女)」「Laundry」
日常品をなんとなく撮った写真,と思ったらイラストのように物が縁取られている.
写真に描いたのかと思ってよく見ると,実物の周りに実際に線を描き,それを撮ったものだった.
たったそれだけのことで2.5次元のような,日常と非日常を往還する経験ができる.
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(県美A-10)村山悟郎/「環世界とプログラムのための肖像」 Decoy-walking
AI利用のアート作品もこれから増えてくるだろう.
この作品はAIの認識方法をもとに作られているらしい.
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あと,これ↓はマルセル・デュシャンの「階段を降りる裸体」へのオマージュだろうか.
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en.wikipedia.org
そういえば,前回のトリエンナーレ調査冒頭でもデュシャンについて触れたね.
tokidoki.hatenablog.jp

(県美A-17)菅俊一/「その後を、想像する」
今回の調査で一番知性にビンビン来た作品.正確にはこの部屋で流れているアニメーションだ.
「ピタゴラスイッチ」で一般に知られる佐藤雅彦氏の門下生,Eテレの2355なんかを作っているとのこと.
タイトル「その後を,想像する」は何よりここで流れているアニメを見るのがよろしい.
あとちょっとで結果が出るところで画面がブラック・アウトする数々のアニメーションに,その場にいた皆が「あ~っ!」と反応していた.
その後どうなるのか想像してね,ってことだけど,このモヤモヤ感はなかなか楽しい.
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(県美A-13)Heather DEWEY-HAGBORG/Stranger Visions, Dublin: Sample 6
なにかリアルな面が浮かぶウインドウの下には煙草の吸殻やチューインガムといったゴミ.
これ,吸殻やガムから抽出されたDNAをもとに復元した顔なのだ.
つまりだ.私達はもう常にDNAという個人情報を辺りに撒き散らして過ごしているということだ.
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(県美A-14)dividual inc./ラストワーズ/タイプトレース
ここで展示されていたのは,あと10分で死ぬとしたら,何を言い残す?というテーマで一般から集められた言葉たちだ.
入り口にこのプロジェクトに参加できるように名刺大のQRコードが配られていた.
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(県美A-16)文谷有佳里/「ガラスドローイング」
何かを描いているようで何も描いていない.
エッチングのようなタッチの抽象的なしかし有機的なドローイング.
なんだか音楽的だなぁ,とおもって後で解説を見たら,このアーティスト,やはりそういう背景を持つ人だった.
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(県美A-11)田中功起/抽象・家族
映像がメインの作品.
そういえばというか予想通りというか,今回のトリエンナーレ,問題提起型・ジャーナリズム的な作品が多い.
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(県美A-18b)James BRIDLE/継ぎ目のない移行
12階にある夏場は暑くて近づきがたい展望回廊から見る作品.
はじめどこに作品があるのかウロウロしていたが,周りのお客の視線の先を見たらあった.
無人偵察機 RQ-4 グローバルホークの実物大をドローイングした作品とのこと.
こんなのが飛び回っている現在,また一歩ターミネーターの世界に近づいたような.
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ターミネーター (日本語吹替完全版) スチールブック仕様 [Blu-ray]

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(県美A-02)exonemo/The Kiss
そういえば10階入り口すぐにこの作品があったね.
モニターに映し出される顔は,ただ目をつぶっているだけなのかもしれない.
けれどこうして重ねられると僕らは想像するわけだ.
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(県美A-19)今村洋平/「tsurugi」「peak」
なんでもシルクスクリーンの手法で1万回も塗り重ねて作られた作品とのこと.
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(県美A-20)袁廣鳴/日常演習
数ある問題提起型作品の中でショッキングだったのがこれ.
ドローンで台湾の街を撮影しているのだけど,車1台人ひとり人いない,死んだような街.
え~,これどうやって撮影しているんだ!!と思わず解説を読むと,これは防空訓練の風景なのだそうだ.
なんでも春先に日中の30分間,みな屋内に留まり一切の交通も不可とされる訓練とのこと.
まるでディストピア映画のようなのだけど,これがすぐ隣の国で起こっている現実なんだ.
あ,因みにこれは映像作品.
なが~い警報が鳴り響き突然人だけが消えてしまったような街をドローンが淡々と撮影している.
とても不気味な作品だった.
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8階は世界的な様々な問題を提起する作品が多くあったが,映像作品なので撮影せず.
あ,もちろん冒頭にあげた「不自由展」もあったけど,今は触れないでおくね.
街なかで「右」の方々に刺されたりしてもバカバカしいからね.
(ああ,これこそまさに「表現の不自由展」だ!)

(県美A-24)Stuart RINGHOLT/原子力の時計
目を引く大きな時計.裏はカッコイイメカニック.
HPには「原子力の時計」とあったけど,ああ,確かに裏の黄色とこの形はそうだね!
でもコンセプトがいまいち掴めてないから,また今度きちんと見よう.
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(県美A-25)Walead BESHTY/「FedEx」「トラベル・ピクチャーズ」
空港のX線検査でフィルムが感光してしまうのだけど,あえて防護せずに通過させる.
FedExの箱に載っかるガラスの箱は実際に運ばれたもの.
輸送する,ということについての一考察.
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(県美A-26)Pangrok Sulap/進化の衰退
長い廊下にあるなが~い版画.
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(県美A-31)Miriam CAHN/美しいブルー,など
美しい色合いと,だけどそこに描かれている不気味なヒト型.
世界のいろいろなことが複雑に絡み合って,アーティストのフィルターを通して滲み出てきたモノたち.
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(県美A-32)藤原葵/Conflagration
爆発,を描いた作品.
アニメ的な表現なのは,そこから影響を受けているから,らしい.
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あと,地下B2にあった映像作品.
(県美A-34ab)加藤翼/Woodstock 2017など
映像だから撮影しなかったけど,ロックバンドのメンバーが互いにロープで結び付けられ演奏を困難なものにする.
それが何ともコミカルで面白かった.思えば人と人ってのはこういうことでもある.

世界は複雑だ.それを一言二言で片付けてしまうお馬鹿さん国家元首が,この頃多すぎるね.
ポピュリズムとはこれほど世の中を腐敗させるのだね.
tokidoki.hatenablog.jp

さて,次回は名古屋市美術館かな.