遊び tokidoki 仕事

数学と音楽と教育と遊び

| おしごと - きょういく - がくせい - ゼミ - イベント | すうがく - おんがく - 数理音楽 - DTM - かがく - scratch
| Art - photo - おきにー - Tips - ものもう - あれこれ | About - Top

Benford則を見てみた

今年も講義「統計とコンピュータ」がはじまった.
それが一般の学生なら興味を持つ話題であっても数学の学生はデータを眺めることが嫌いだ,というこの十数年の経験が気持ちを曇らせるのだけど,また新たなネタ作りを試みている.
今年はBenford則をやってみよう.というより統計教育でよく取り扱われる標準ネタであるものを今までやっていなかったことに気付いた.
ベンフォードの法則 - Wikipedia

下準備で比較的大きな桁数まで現れそうな株式市場からのデータに適用してみた.
2018年3月30日の東証一部上場企業4019社の「始値」と「出来高」それぞれの最高桁の数字の分布を眺める.
始値については「株価」としての適正な価格範囲が共通認識としてあるために理論的になるはずの分布からややずれる一方で,出来高については発行株式数が巨大な企業もあるために,Benford則が綺麗に表れている.
おお,ネタにするには良い感じだ.
f:id:okiraku894:20180413232335p:plain

一方,数学の学生が興味を持ちそうな,与えられた数のべき乗の先頭の数字についてもやってみた.
(1.1)^n から (1.5)^nn=1 から 1000 まで行って各々先頭の数字を拾った.
こちらは更に見事にBenford則に当てはまっている.
f:id:okiraku894:20180413232339p:plain

結局のところ,これらの現象は確率変数  X\log_{10}X の小数部分が [0,1) で一様分布することが元になっているのであって,何か珍しいことが起こっているわけではないのだけど,見た目にはへ~っとなりやすい.

そもそも数  X の最高桁の数が  m だということは適当な自然数 e によって
\begin{equation}
m\cdot 10^e\le X < (m+1)\cdot 10^e
\end{equation}と書けるということであり,
\begin{equation}
e+\log_{10}m \le \log_{10}X < e+\log_{10}(m+1)
\end{equation}となるから,つまり \log_{10}X の小数部分を眺めているに他ならない.そして
\begin{equation}
\sum_{m=1}^9\left(\log_{10}(m+1)-\log_{10}m\right)=1
\end{equation}となるものだから,ちょうど  \log_{10}(m+1)-\log_{10}m が数字  m の現れる確率となる.

特に数  \alpha\ (\log_{10}\alpha\not\in \mathbb{Q}) のべき乗ならば, n\log_{10}\alpha [0,1) に一様分布するという良く知られたWeylの定理があることから,殊更Benford則がはっきり表れることになる.

さて,このネタ,反応あるかなぁ...

新入生の気持ちをテキストマイニング

初年次演習なる大体全国の大学に導入されるようになってきた講義から.

本日第一回を行って,Google Formにてとりあえず気持ちのアンケートを取ってみた.

  • 問1.小学校から高等学校までの教室での授業(校内を含む)の中で最も印象に残っている良かった授業について1 つ以上,それが良かった理由や好きになったきっかけは何だったか?
  • 問2.小学校から高等学校までの教室での授業(校内を含む)の中で最も印象に残っている嫌いだった授業について1 つ以上,それが嫌いになった理由やきっかけは何だったか?
  • 問3.あなたが大学の講義に望むこと,期待すること,求めることは何?

これら記述式の内容54人分を集め,最近お気に入りでよく遊んでいる,User Localで使わせてくれるフリーのテキストマイニングにかけてみた.
www.userlocal.jp

2種の文章データを対比させてマイニングしてくれるので,問1と問2を対比させてみた.
Aが好きだった授業,Bが嫌いだった授業.
f:id:okiraku894:20180409174624p:plain
f:id:okiraku894:20180409174625p:plain
好きな授業では学生の能動的関わりが現れるのに対し,嫌いな授業では受動性をもたらすような単語が並ぶ.おやおや,なかなか見事な結果だ.まさにR. deCharms の唱えるところの「自己原因性」が必要なんだってことだし,E.L.Deci が示したように「内発的動機づけ」が重要なんだってことだ.

f:id:okiraku894:20180409174626p:plain
f:id:okiraku894:20180409174627p:plain
f:id:okiraku894:20180409174628p:plain

問3.の大学講義に望むことについてはどうだろう.
f:id:okiraku894:20180409174629p:plain
f:id:okiraku894:20180409174759p:plain
やはり教員養成大学.一番に「教員」が出てくる.
そして実用志向がある一方で,深く学びたいという声も聞こえてくる.

ホント,この時期の新入生は良い.やはり希望に満ち溢れ,活き活きとしている.
彼らの学びのモチベーションがどうすれば維持されるのか.
教育システムに,そして我々に常に課せられている仕事のはずなんだ.
はずなんだけどね.

人を伸ばす力―内発と自律のすすめ

人を伸ばす力―内発と自律のすすめ

美術館はしご―シャガール→ミュシャ→はしもとみお展

f:id:okiraku894:20180216144836j:plain
先週に引き続き,美術館探訪.

まず名古屋市美術館ではシャガール展.
ただし,今回面白いのはシャガールの三次元作品たちがテーマだったこと.
けれどいわゆる彫刻というよりは絵画の延長のような,レリーフのような作品.
シャガールの世界はあくまでも絵画的であって,そしてコラージュ的だ.
今回発見だったのはコラージュ作品を重ねるうちに
シャガールは時間もコラージュしていったのだということ.
だからシャガールの作品は時間軸まで含めた四次元的なんだってこと.
絵画なのにね.
いや,四次元から見た最も美しい物語風景を二次元に射影した,
ということなのかもしれない.

次に株主優待を使ってのミュシャ展@松坂屋美術館.
ミュシャは何度も見てきたけれど,
あの美しい女性たちの原点となる若き日の作品が見られたのは興味深かった.

そうして最後にヤマザキマザック美術館にて,はしもとみおの動物の木彫り作品.
ヤマザキマザックコレクションのアール・ヌーヴォ―の調度品たちに溶け込む木彫りの動物たち.

f:id:okiraku894:20180216125227j:plain
f:id:okiraku894:20180216125301j:plain
f:id:okiraku894:20180216125324j:plain
f:id:okiraku894:20180216125401j:plain


f:id:okiraku894:20180216125901j:plain
f:id:okiraku894:20180216130026j:plain
f:id:okiraku894:20180216130148j:plain


f:id:okiraku894:20180216130233j:plain
f:id:okiraku894:20180216130339j:plain
f:id:okiraku894:20180216130410j:plain


f:id:okiraku894:20180216130514j:plain
f:id:okiraku894:20180216130526j:plain


f:id:okiraku894:20180216130800j:plain
f:id:okiraku894:20180216130745j:plain


そうそう,絵画もあった.
f:id:okiraku894:20180216130057j:plain
f:id:okiraku894:20180216130111j:plain
彫ることが頭にあるから,解剖学的によく観察している.


高級ベッドで遊ぶ木彫りの猫たち.
f:id:okiraku894:20180216130929j:plain

織り目の在りか(現代美術 in 一宮)

卒論発表会翌日,漸く会期末の「織り目の在りか-現代美術 in 一宮」へ.
これ,次期愛知トリエンナーレに向けてのArt展.
そういえば一昨年の愛知トリエンナーレもそれに先駆けてArt展やってたよね.
tokidoki.hatenablog.jp

この一週間ばかり微熱が続くなか,電車に飛び乗り一宮へ.
f:id:okiraku894:20180211103123j:plain:w400,left
三上 俊希:呼吸シリーズ
一宮駅構内の展示.
f:id:okiraku894:20180211103126j:plain:w400,right


バス一日乗車券を買って旧林家へ.
f:id:okiraku894:20180211113519j:plain:w400,left
f:id:okiraku894:20180211113533j:plain:w400,right


杉山 卓朗氏の作品群.
f:id:okiraku894:20180211110535j:plain
f:id:okiraku894:20180211110613j:plain
f:id:okiraku894:20180211110733j:plain
f:id:okiraku894:20180211110809j:plain

何だか素敵だったので,何となく撮った窓.
f:id:okiraku894:20180211113006j:plain

宮田 明日鹿氏の作品群.
f:id:okiraku894:20180211113103j:plain
f:id:okiraku894:20180211113113j:plain:w400,right
f:id:okiraku894:20180211113154j:plain:w400,left


f:id:okiraku894:20180211113216j:plain

そうそう,映像作品だったから撮らなかったけど,
小川 育氏のストップモーションアニメーションがなかなか「神経にクル」面白い作品だった.
おっと,Youtubeに一部置いてあるね.

「I Wanna Be Your Friend」(小川 育 / Iku OGAWA)
今度のトリエンナーレにも出展しないかな.

再びバスに乗って,墨会館へ.
f:id:okiraku894:20180211115803j:plain:w400

こちらでもまだ,三上 俊希:呼吸シリーズ
f:id:okiraku894:20180211115953j:plain
f:id:okiraku894:20180211120100j:plain
f:id:okiraku894:20180211120302j:plain
f:id:okiraku894:20180211120401j:plain

再びバスに乗ってオリナス一宮へ.

松本 崇宏:閉じて揺れて
f:id:okiraku894:20180211124259j:plain
f:id:okiraku894:20180211124447j:plain

ここ,建物自体がなかなか素敵.
f:id:okiraku894:20180211124650j:plain
f:id:okiraku894:20180211124735j:plain
f:id:okiraku894:20180211124355j:plain:w400,right
子どもたちとの共同作品も.
f:id:okiraku894:20180211124519j:plain:w400,left


二階に上がると,面白作品たちがあった.

百瀬 文:Here
部屋自体の絨毯,椅子,観葉植物がみな作品で,
さらにこの電話番号にかけると哲学的な応答メッセージが返ってくる.
f:id:okiraku894:20180211125150j:plain

姫田 真武:ようこそぼくです4
f:id:okiraku894:20180211131712j:plain
トリエンナーレに必ず一つや二つはあるナンセンスモノ(失礼).
Eテレ歌のお兄さん的なノリのアニメーション作品.
ここで流れた「レッツコリツ」はちょっと癖になった.
もう一度見れないものかと探したら,ネットにあるある.
vimeo.com

一回りして一宮駅へ.上の階にも三上 俊希:呼吸シリーズ.
f:id:okiraku894:20180211132901j:plain
いずれもILCE-6000+SEL35F1.8OSS and SEL1670ZF4.0, Lightroomにて現像

次回愛知トリエンナーレは2019.どんな雰囲気になるかな.

ようやく卒論審査会 in 2018

今年度もようやくここまで来ました.
f:id:okiraku894:20180112130147j:plain:w400,left


f:id:okiraku894:20180112155016j:plain:w400,right
タイトル,一人だけまだ決まってないとき.


緊張の本番開始.
f:id:okiraku894:20180210092826j:plain:w600

f:id:okiraku894:20180210093855j:plain:w400,left
結構うすい環(わ)ぁ,土星の環
―重力ポテンシャルを利用した惑星環形成のモデル―

土星などの惑星環が薄く形成されてしまう理由を簡単な力学だけで説明を試みたよ.


f:id:okiraku894:20180210094542j:plain:w400,right
タネト――ク
―カードマジックを離散力学系で読み解く―

カードシャッフル・トリックにまつわる数理的現象を離散力学系として分析した.その場でマジックをする初めての試み.


f:id:okiraku894:20180210100423j:plain:w400,left
matrix( 母 ) をたずねて三次元
―高次元ピタゴラス数のネットワーク―

ピタゴラス数を産む有名な行列の話を3次元にも拡張できないか試みた話.今回は3次元にお母さんは見つからなかった.果たして3次元以上にお母さんはいるのだろうか?


f:id:okiraku894:20180210101341j:plain:w400,right
効率ファースト
―待ち行列を用いたより効率的なレジ待ち並びの提案―

待ち行列理論をレジ待ちに適用した.あんなに苦労した不等式評価がさらっと登場しただけなんだけど,発表するとやはりそうなるのかな.


f:id:okiraku894:20180210103112j:plain:w400,left
ゼミ友学園
―研究室マッチング問題,忖度を添えて―

色んな意味でブラックジョークを交えて,1対多マッチング理論とその応用.Scratchによるアルゴリズムの提示を今回初めてやってみた.


f:id:okiraku894:20180210105040j:plain:w400,right
ゼミの中心で「あ~」と叫ぶ
―線形予測を用いた sin 波の合成―

Excel VBAも使わず,ほとんど手作業で線形予測による母音の合成を行うという力作.いやホント,合成が間に合ってよかったよ.ちゃんと「あいうえお」って聞こえたし,ね.


うん,何とかなった,今年も.皆の者,乙.



他のゼミの発表を見て改めて考えさせられる点,多々あり.
徐々にうちのゼミも下学年に「分かった気にさせる」方向を取ってきたのだが,
果たしてそれをどこまですべきなのか,ということだった.
つまりこれら発表が「誰」あるいは「何」に対して行われるべきか,ということだ.
他ならぬこれは「卒業論文審査会」であって,ゼミの宣伝会ではない.
審査員向けの研究発表が本題であることに変わりはなく,
その点に真摯に向き合っているかどうか,は守らねばならない点だ.

しかし一方で下の学年の勉学への意欲向上につなげる,という目的もこの審査会にはある.
(と思ってたけど,そう?)
分かりやすいところ,受けの良いところだけを掻い摘んで発表するスタイルも,
真の研究内容の誤解を招かない範囲で行われても可,とも思える.
分からない話が延々と続くのであれば,彼らの意識も持たない.
ちょいちょい下学年向けの小ネタを挟みながらのトークも必要悪なのかもしれない.
さて,ではどうあるべきだろうか?

下学年には悪いのだけど,表面だけ「分かったつもり」になってもらうこと目指しながらも,
(それはきっと十分な間をかけて研究動機を語ることなのだろう)
分かっている人が見れば研究内容の本質がちゃんと語られている,
そんなプレゼンが落としどころなんだろうかね,という気になってきた.
この辺りのバランスが難しいし,教員目線だけでは分からないところだったりする.
ああ,でもそうだな,自分だったらこのネタ,どうプレゼンするかな,って思えば行ける気がする.

どちらにしてもそろそろBeamerを超えた,視覚に訴えるプレゼン道具が必要に思えた.
(え,なに,結局keynoteが羨ましい,という話かい?)


って,何とか終わって,う・ち・あ・げ!
でも,2年の世話人だったので開始から1時間遅れで参加.
そうそう,3年とそして去年卒業の11代目もゲスト参加.
f:id:okiraku894:20180212100226j:plain
f:id:okiraku894:20180212100225j:plain

で,口上と共に飲み会の場でいただいたのが,
若かりし頃(1年半前)の彼らの写真の入ったマグカップ,
f:id:okiraku894:20180212094846j:plain

から~の,ど~ん.

f:id:okiraku894:20180212095139j:plain:w400
ま,散々,九平次九平次ってゆうてたからね,ゼミ中に.
あざっす!