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「することができる(be able to)」病

卒論発表会の為の練習会,お疲れ様です(というローカルな話題).
で,その練習会で今年もやはりな現象.

数年前に気付き始めたら,あらゆる所で気になって仕方ないこと.
日本全国老若男女の「することができる」病.
この形式ばった言い回しは英語でいうところのbe able toだろうか.
特に「可能」が重なって使われる場面で,この「することができる」を連チャンで言われると,
「日本に来て何年目ですか?」と言いたくもなる.
標準語を喋っているであろうNHKアナウンサーですら「することができる」の山だ.
例えばこんな感じ.

「この装置にはカメラを搭載することができますので,
位置を確認することができ,安全に操作することができます.」

日本語が少し分かる外国人にも通用しやすいように
意図的にこういった言い回しを使用する方針にしたのかもしれない,
などと一時期勘ぐってあれこれネットで調べてみたものの,
それらしいソースは現れない.
子どもの頃の報道はそんな喋り方じゃなかったよな,
もっと滑らかな日本語をアナウンサーは喋っていたよな,
そうだったよね?と両親に訴えても「さぁ?」といった反応.
あれあれ.
自分より古い人たち,違和感持ってないってこと?
確かにテレビでインタビューされている市井のご老人も「することができる」を多用している.
ネットで誰か彼かは騒いでるだろうと折に触れ検索するものの,見当たらない*1
そしてまわりの誰もオカシイと言わない.
えっと...自分だけ?

こうなってくると自分の方がオカシイのかもしれないと自信が無くなってくる.
いや,もしかすると「1Q84」のように,
いつの間にか並行世界に入り込んでしまったのかもしれない.
実は満月の陰にうっすらと苔むしたのもう一つの月があるんじゃないか,
と本当に探してしまった.

1Q84 1-3巻セット

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ちょっと振り返ってみると,まだ昭和だったころ「日本語の乱れ」というお題目で
「ら抜き言葉」が取り沙汰された時代があった.
「見れる」「食べれる」変だろう?いや,変じゃない.
そういった古い世代と若い世代の小さな対立もあって,
そして「れる・られる」が可能のほかに受け身,尊敬,自発もあるためややこしく,
その上そんな風に叩かれるのなら可能の意味では「れる・られる」は使わず,
「することができる」にしてしまえ,となったのかもしれない.
確かに何でもかんでも「することができる」で可能が表せる,おっと,表される.
そして日本語に不慣れな人たち(日本人を含め)に通じやすい表現となったのかもしれない.

学生にチラッと聞いてみたら,
「することができる」の方が丁寧に感じる,とのこと.
なるほど,普段使いでない格式ばった言い方だから距離があって,
だから「丁寧」と感じるのだろうか.

でもなぁ.
「理解することができないので話すことができません.」
とか言われると,この日本人,やはり日本に来て日が浅いんだろうなぁ,と思ってしまう.
「理解できませんので話せません.」
じゃだめなんだろうか.

そういえば子どもの頃,強烈に違和感を覚えたナレーションがテレビアニメにあった.
次回予告の最後にいつもこのフレーズが流れ,次週への期待感を煽る.
明らかに意図して強調されたゴツゴツした言い回しにしたのだろう,と子供心に感じたものだ.
それがこれ↓

「君は、
生き延びる事が出来るか」

機動戦士ガンダム I [DVD]

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ああ,果たして僕は,この先こんな国で生き延びる事が出来るだろうか
いや,本当に何らかの並行世界に紛れ込んでいて,それに気付いてしまったのだとしたら,
僕は闇の組織にこの文章公開後に消されているかもうわぁおまいら,何をすくぁwせdrftgyふじこlp

*1:同様な違和感を訴える人がかろうじて居ました.こちらでは,中学英語の直訳の習慣が残ったのだろう,と分析しています.しかしそんなことがNHKにまで影響するだろうか. torokko.sblo.jp

徒然にて候

今年は全くネタとして成立していない卒論が二つ,
バカバカしいと思いつつも形のあるものにすべく呑気な学生を横目に勝手に格闘している日々.
全くもって孤独な闘いである上に,そもそも引き受けなくても良い苦労である.
この頃,本当によく眠れない.今日も5時に目が覚めてしまった.
それでも寝ぼけ眼の中,小さいながらも書けそうな結果を出す.
それが二つのうちの一つ.しかしもう一方は本日のゼミ,当人不在.
いわゆる世間並みの「特別な日」だからだそうだ.
全くもってバカバカしい.バカバカしさの極みだ.
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それでも今年度10代目ゼミ生の指導では,
過去10年の指導を改めて見つめなおす契機となることが多かった.
相手が全く意図通りにならないとき,そもそも意図そのものが理解されないとき,
こちら側はどう力を抜くか,そしてどの程度待つのか.
初めは絶望的に稚拙に見えても,よくよく相手を観察すること.
そしてとにかく出来そうなところをきっかけにしてもらうこと.
エンジンのかけ方,スイッチの入れ方は学生ぞれぞれ皆違うこと.
一旦エンジンがかかると,ときには凄いことが出来てしまうこと.
そして結局のところ,学生一人一人の力を信じてみること.

ま,楽観視なんてとてもできない.年明け,バタバタなんだろうな.

さてさて,そろそろ年の瀬.
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半年もするといろいろ書き込まれている
研究室入り口のホワイトボード.
そろそろクリアーしますか,一度.


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そして,鏡餅風チロル.
このごろはまたこうしてお菓子持参で現れる学生がいてくれて色々有り難い.


そんでもって仕事の帰り際,ふと見上げたら満月がArtisticだったから撮った.
なんでも38年ぶりだそうだ,X'masの満月.
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いずれもILCE-6000+Sony E 35mm f1.8, Lightroomにて現像

Beethoven on Doodle!

何でも生誕245年だそうで,L.v.Beethoven.
年末も近づいてきたことだし,日本人特有の現象だけど
第九聴きたくなってきた.
ピアノ・ソナタ悲愴,第一楽章のテーマって不思議なんだよな.
悲愴と言いながらメジャーで攻めるんだよ.
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そういう話ではなくて,本日のGoogleロゴ,面白かったのでリンクを.
記念日にロゴで遊べるようになってるのだけど,
踏んだり蹴ったりのBeethovenがカワイイ.是非,トライしてみて.
(あ,但しChromeでないと動かないみたいだ.因みに↓は,ただの画像.)
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アクセスはコチラ↓
www.google.com

あと,こういうロゴはDoodleと言うらしく,
過去の全ての動くロゴがアーカイブされていることを今知った.
www.google.com

残念な国(6)―縮む社会

六百兆でなくて,八百兆と言えばいいのに.
と,かつて多くの皆がつっこんだことだろうけど,
あまりに庶民の世相感覚から外れすぎていて吹き出さずにはいられなかった.
thepage.jp
まぁ,そうは言っても何らかの基準見直しで見かけ上達成できる
数値目標なのかもしれない.(だから八百長なのだが.)

そういえば小学生だった頃,小学生ながらに不思議に思っていたことがある.
「今年は経済が何%成長した」と報道し,伸び続けることを人々は喜んでいたのだけど,
そもそも物事は有限なのだから,そんなん,ずっと伸び続けられるわけないのに,
なぜ大人はそれが分からないのだろうか,伸びなくなったときどうするのか,と.
そして実際,確かに伸ばせなくなった現代に至る.

しかし,一億総活躍社会にせよ希望出世率1.8とか介護離職ゼロとか
どれ一つ取っても本気でやるなら数十年スパンで取りかかるべきもの,
政権とは独立な仕組みの上で哲学を持って進められないものだろうかね.
gendai.ismedia.jp

そして自虐的な国民性も手伝っているのか,あらためて「うわぁ」となるデータが.
www.newsweekjapan.jp

「てやんでえ、こちとら江戸っ子だい!宵越しの銭は持たねえや」と
やせ我慢が言えた時代がかつてこの国にあったらしいが,
(それは互いが互いを良くも悪くも関わりあっていた時代だったから)
今はもう人々はすっかり委縮して,一旦やらかして外れると
まず社会復帰できないと多くが信じている.だからこの結果は自然だろう.
徹底した個人主義とそれに伴う責任の外在化,新自由主義,自己責任論.
この国をこの国たらしめていた,地域コミュニティーがすっかり崩壊してしまった.
自分が子どもの頃にはまだ残っていた,寛容でしなやかだった社会は
すっかり失われてしまったんだと,つくづく感じる.
しかしそれも,パイが小さくなっていく現代,致し方ないのか.
www.newsweekjapan.jp

なんだか,今回は記事紹介の羅列.まとめようとも思ってないけど.

シロウト目に見ても時代錯誤なんだよな,政策の何もかもが.
そしてこれっぽっちも「人」を大切にしちゃぁいねぇ.
新自由主義,ここに極まれり,か.

国民なき経済成長 脱・アホノミクスのすすめ (角川新書)

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残念な国(5)―国は人を以て盛なり

OECDの国際教員指導環境調査結果についての記事がちらほら見られたので,
国立政策研究所へ見に行ってみた.www.nier.go.jp
そこにTALIS日本版報告書「2013年調査結果の要約」が置いてある.
あるいはグラフなどで見やすくまとめたOECD国際教員指導環境調査(TALIS)のポイント
のほうが良いかもしれない.
特に最終ページにデータを上げてこの国の現況に対する主張がされていた.

とくにあちこちの記事で取りざたされているのがOECD平均38.3時間/週にたいして,
この国では飛びぬけて53.9時間/週という点だ.
その業務配分,事務業務が重荷なんだろう,と思ってたら,
それよりも課外活動(部活)に時間を吸われている.
調査6項目中5項目がOECD平均を上回り相変わらずな勤勉さがうかがえる.
そして皮肉にも唯一時間の短かった項目が教員の本分たる「授業時間」だった.
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OECD国際教員指導環境調査(TALIS)のポイントから.
こうなってくると,教科教育と課外活動を同一の教員が行うのは
そろそろ諦めたほうが良いのではなかろうか.
課外活動専門の職や何らかの受け皿が本当は必要なんだろうと,
口には出さねど皆思っているのでは?

ま,だけど夢物語なんだろうね,お財布省がこれなんだから.news.tbs.co.jp
3.7万人削減で0.2兆円ほどの「節約」なのかな.
それだったら,シロウト目に「特別会計」どっか削ったらええやん,
とか思って現況を覗いてみた.www.mof.go.jp
およそ200兆円の3/4が社会保障と国債の償還と利子なんだね.
そしてよく見るとここには文科省固有の部分がない.
(法人化前の国立大学だったときはここに特別会計枠があったらしいが.)
でもなぁ,人を育てるほか生き延びる術のない国のはずなのに,
短期的な教育予算の付け方では育たないよね.
大学への予算どうのこうののことを言ってるんじゃないんだ.
教育全体への予算の付け方,これは国家100年の計として
外的状況がどう変わっても頑として子どもたちを育てる予算だけは
安定して確保できる仕組みにしておけなかったものだろうか.
賢い家庭だって未来を見越して教育費の積み立てをどうにかしてするものだろうに.

さて先程の調査の続き.一方でまた,そりゃそうだろうな,という結果も.
なぜならこれまで多くの教員自身が「主体的学び」を経験してこなかったのだから.
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OECD国際教員指導環境調査(TALIS)のポイントから.
となると今すぐできることは,目の前の学生たち,やがて現場に出る学生たちに,
たとえ疑似的・錯覚であったとしても主体的に学んだという経験ができるよう
ささやかでも仕掛けを作ることだ,といつもの主張に戻るわけだ.

某国はその創設時より虎視眈々と覇権を目指して今日に至る.
数年ごとに顔を変えてきた,他国を出し抜くなんてことのできないこの国では,
権謀術数を張り巡らす国にとても対抗できる気がしない.
チェックメイトされる前に人を育てておかなくては.

山は樹を以て茂り,国は人を以て盛なり.
                吉田松陰

教員環境の国際比較 (OECD国際教員指導環境調査(TALIS) 2013年調査結果報告書)

教員環境の国際比較 (OECD国際教員指導環境調査(TALIS) 2013年調査結果報告書)

「主体的学び」につなげる評価と学習方法―カナダで実践されるICEモデル (主体的学びシリーズ―主体的学び研究所)

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人を伸ばす力―内発と自律のすすめ

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