読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

遊び tokidoki 仕事

数学と音楽と教育と遊び

Top | おしごと | ゼミ | がくせい | すうがく | かがく | きょういく | おんがく | おきにー | Tips | Photo | イベント | ものもう | あれこれ | About

手がつけられない

何がって,今年度の卒論.(およそ一月沈黙していたのは正にこのせい.)
何しろ,意図通り動けたこれまでの卒業生でもギリギリ戦っていたところを
今年のようにこちらの意図通り動かない/動けない者が複数になると,
全員の卒論の質が落ちてしまう.
しかし,こちらは半年を彼らに費やしている.無駄にはできない.
で,相変わらずの真っ赤な添削↓(クリックで拡大という公開処刑
しかし,このように赤が入れられる程度なら,十分素晴らしいことなのだと,
今回はっきり悟った.そんなゼミである.

それでも,何とか今週4名は完成させ,教務課へ提出.
来週,残り3名の後処理.
さしあたり,内容は以下.(予定発表順)

  • 鬼ごっこの数理

子と鬼がターン制で順に動き,決められた条件の下で子を捕まえられるか?
について高校数学だけで突き詰めた.道具は本当に何も使わなかったけど,
何しろ論理を突き詰めていく過程が鬼ごっこそのもの.
実際にBASICで鬼ごっこゲームを作ってみて,やはり結論が正しそうなので漸く終結.
本人が十分数学体験できた,という意味でOKかな.


そろそろ他ゼミでも扱うようになってきたこの話題.
微分方程式モデルのある意味王道的な話で,2年前のゼミ生卒論の延長上を詰めてみた.
当初は本人あまり面白みを感じていなかったようだが,前期からちょこちょこ進めてきて,
国立感染症研究所の具体的データを使ったシュミレーションなどを通して
最終的には本人なりの工夫と試行錯誤が行われたようだ.


  • 生物分布の格子モデル

現在まだ進行中で,そしておそらく時間切れ.
格子の各点上に生物がいる/いないの2状態のみを考え,自分の隣に空き地があれば
そこに進入して子孫を増やす,といったようなモデルの話.
本人,初めは感染症の拡がり方をネットワークモデルでやりたい,などと言ってた割りに,
「テキストが難しい難しい」などと避けているうちに時間が経って,
結局無限粒子系を扱うようなかえって難しい話題に突っ込んでしまった.
今もシュミレーションプログラムを組んでいるところだが,どこまでやれるか.
(私自身はこの手のシュミレーションを初めてやってみて,
ペア近似で得られた微分方程式と実験結果が一致して面白く感じているのだが...)


  • 人と人のつながりのネットワークモデル

んー.本人がとても怠惰なためちっともゼミに現れず,
案の定「ざまー見ろ」なことになりつつあるネタ.
いわゆる,複雑ネットワークの話題で,もっと早くから手がけていれば
大変面白くなっただろうに,こちらとしてはここが限界.
mixiのネットワーク上で行われたある実験をGalton-Watsonモデルで
解釈してみようというのが本人の意図らしい.
しかし,送ってくる証明が尽く間違っていて,論理展開も記述もグシャグシャ.
あぁ,手がつけられない!


  • 投票者の勢力を測る尺度の話

手がつけられない,第2弾.いわゆる,投票力指数についての話題.
提携型ゲームにおけるshapley値を投票ゲームにあてはめたもの.
やはりこれまでの生き方が怠惰だったのか4年の今ですらフルコマで,
結果なかなかゼミができず,ネタも11月末に新たに設定.
ゼミをやると分かっている風情なのだが,いざ記述させてみると尽く間違っている.
赤を入れることすらできない.あぁ,手がつけられない!


  • 公平なオークションの設計

さて,フラストレーションが溜まったところで,美しい理論を.
オークションには様々な形態があるのだが,
ある種の基準を満たすようにしてやると,
入札者が正直に行動することが最も入札者にとって利益になるよう
オークションが設計できるという話.
これはメカニズムデザインという社会システムを設計する
大変美しい理論の一つの応用で,
この理論に2008年のノーベル経済学賞が与えられた事を今回初めて知った.
収入同値定理を様々な形で証明する目的で始めた卒論だったが,
思わぬ「副収入」を得られたと思う.


  • 安定結婚問題の解を探索する新手法の提案

そして最後,安定マッチング問題.
例えば,毎年その時期になると学生同士が殺伐とするゼミ配属も
マッチング問題の一つ.ここでは男女の合コンをモデルに,
互いの選好順序に照らして最も不満の少ないペアリングを構成する話.
よく知られたGale-Shapleyアルゴリズムによる解から出発し,
ゼミ生本人が発見した「お一人様」戦略を駆使して,
全ての安定マッチングが構成できることを証明した.
もっとも,本人が大量に手を動かした結果,直感的に見つけたことで,
それを数学の言葉できちんと示すことが如何に困難だったか...



こうして並べてみると,
何とかいくらかでも彼ら自身で数学体験してくれたのかなぁ.
現場に向かったとき,その体験がふと生かされる場面があれば
こちらも報われるところだが...