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アルゴ「リズム」の夕べ

この3連休中にあと2回分の初年次導入ネタを開発したかったのだが,
これまでのところ小ネタは集まったが講義として成立し辛い状態のままだ.
当初からのアイディアで,Boomwackerを使った,
アルゴリズミックな即興演奏をクラス全体で奏でる何てことも考えていたのだが,
何かまとまらない.
で,な〜んかないかなぁっと「アルゴリズム音楽」をKeywordに探していたら,
こんな面白いページを見つけた.
Bemmu & viznut によるアルゴリズム音楽オンライン生成のページ

何とJavascriptでリアルタイムに入力した数式から音楽合成を行うようだ.
なんかいろいろ遊んでたら,Daft Punkっぽくなった.
え,彼ら,もしかして...って,怒られますね.


クリックすると,作った数式で演奏が始まる.
音量に注意→つくってみた


まぁ,そもそもミニマルミュージックってのも,極小の仕組みだけで音楽を作る動きだから,
アルゴリズム音楽とも思えるのかな.
そうだ,Steve Reichの有名な Piano Phase 貼っとこ.
音楽のモアレ現象だ.



って遊んでると,あっという間に一日が終わる.
危ない危ない.

Boomwhackers/ドレミパイプ ダイアトニックセット(ドレミファソラシド)8音セット BWDW

Boomwhackers/ドレミパイプ ダイアトニックセット(ドレミファソラシド)8音セット BWDW

CeVIO,おもしれぇ!

フリーの音声合成ソフトCeVIO Creative Studio FREEが公開されたので,
早速いじってみた.

2004年にYAMAHAかたVocaloidが発売されて以来,
歌声合成技術は完全に一般が認知するところとなったが,
あの鼻を摘んだような歌声がどうしても気に入らなかった.
もちろん,それなりの調教師がいじればそれなりのものにはなったのだけど.
が,このCeVIOプロジェクトでは,デフォルトで鼻摘み感がかなり無くなってる.
隠れマルコフモデルの音声合成への応用なんかをちら読みしたんだけど,
如何にして音素同士を自然に滑らかに繋ぐかに力がそそがれていて,
一定量の文脈での学習データを揃えたのち,学習外の音素をつなぐ際には,
隠れマルコフモデルで尤もらしいつなぎ方で合成する,ってなことなのかな.


自然(この場合音声会話)を単純化して数学モデルにし,
そこに数学という道具を使って解析と合成を行って,再び現実世界へ還元したものであり,
まさに数学という思考の道具箱が十二分に使われている様がよく分かる例じゃないかな.

やっぱ,くやしぃんだよなぁ

何がって,絶対音感が無いこと.
今年も絶対音感のあるゼミ生がいて,
聴いた音楽を片っ端から譜面に拾っていく姿見てると,
んんっ,もぅっっ!ってなる.


あの能力の仕組みはまだまだよく分からないことが多いらしく,
諸説あるようなんだけど,
幼少時にきちんと訓練を受けないと大人になってからでは手遅れ,
というのが一般に言われている.
中には,特に訓練せずとも先天的に身についていることもあるらしい.
実際,今のゼミ生がその手.
何でも例えばGの音が鳴っていると,人は誰でも皆,
「ソ」と聴こえる(あたかもその音が「ソ」と言ってる)と思っていたらしい.
我々が赤い色を「赤」としか見られない以上のことが起こっているようだ.*1
だから,普通の人には絶対音感が無いことを知って,
では皆Gの音はどう聞こえているのか,すごく不思議に思うらしい.
ただ音楽聴くと,いちいち絶対音名がついてくるらしく,
だから音楽聴きながら勉強なんてできない,とのこと.


映画音楽の耳コピを趣味にしている自分としては,
どうしても欲しい能力なんだけど,もう絶対身につかないものなんだろうか.
ってことで検索してみると,同じように大人になってから
絶対音感を羨ましく感じている人は結構いて,例えばこんなページを見つけた.
大人のための絶対音感への道
そこに「音感養成ソフト」があって,
ふとしたときに試しては絶望感に浸っている.
しかし,色々分析してみると自分の場合,全音階しか出題されないなら,
完璧に当てられるみたいだ.
その世界では確かにGの音は「ソ」と言っているのだ.
つまり,相対音感からの計算によって「ソ」と思っているのでなく,
そのG音そのままで「ソ」だ!と反応しているのだと思う.
ところが,半音(つまり黒鍵)が入ってきた途端,まったく無茶苦茶になってしまう.
つまりだ.世の中に半音が無かったなら,自分も絶対音感がある,
と豪語していたかもしれない.(ホントかなぁ...)


とは言ってみたものの,実際に色んな音楽が鳴っている中では,
全く役立たない.あっという間に相対音感に引きづられて,
Gの音が「ソ」でなくなってしまう.
つまり,頭のなかではたちどころに「移動ド」で聴いてしまうようなのだ.
そしてどうやら,頭のなかで「絶対音」としての全音階と,
旋律に引きづられて翻訳される「移動ド」音階のせめぎ合いが起こっているようなのだ.
結果,大・混・乱〜!


だから,同じ音を旋律内で解釈しなおして別の音名を当てたりしてる,
相対音感のほうがある意味やっていることは複雑だ.
一方で絶対音感は,音Gは何があっても「ソ」とい感覚だから,
完全に周波数が聴覚記憶と1対1に結びついている状態なんだろう.
例えば音の数ぶんだけそれに反応する聴覚神経が用意されているような.
学術的には何の根拠もないよ,因みに.)


これは,何か規則性や構造を掴んでから理解しようとする前に,
とにかく語呂による丸暗記で覚えさせてしまう九九に近い.
実際,何の抵抗もなく素直にスイスイ暗記できてしまう小学校低学年で
九九を染み込ませておかないと,その子は生涯に亘って苦労することになる.
真似ること,脳に転写することが最も得意な時期だからこそできること,
したがってつべこべ言わずやってしまわねばならないことが教育にはあるということだ.


脱線した.
先ほどの「絶対音感への道」には,何かいつでも思い出せる,
基準となるメロディーを用意しておくといい,とある.
それならたくさんある.
ショパンのOp.18「華麗なる大円舞曲」,冒頭B♭だ(あ,いきなり黒鍵).
リヒャルト・シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」は堂々のC(CM)だ.
ベートーベンのピアノソナタ「悲愴」もC
(こっちはCm,普段はこれで思い出してることが多い),
毎朝なんちゃって練習してるショパンの「大洋のエチュード」もC(Cm).
ラフマニノフ前奏曲「鐘」はAのユニゾンだ.
って,憶えてても,音楽鳴ってると全く使えないんだよな,これが.
結局,覚えている音との相対音程を計算することになるので,
瞬時になんて反応できないからだ.
それに疲れてくると,半音下がってくる.ふぅ〜.


鳴っている音が,文脈の中でなくて,そのままの音として分かる.
やっぱ,絶対音感便利だ.
本当は相対音感と絶対音感のスイッチが付いてて,
カチカチっと切り替えられるのが最強なんだけど,
音楽家ってそういう人たち多いんだろうな.

*1:というのも,絶対的だと思っていても実は周りの色彩で色が変わって見える,といのが
普通の我々だからだ.例えばNTTが開いているサイトイリュージョン・フォーラム
色彩の実験なんか分かりやすいだろう.

和声を環論で

一方で,不定調性音楽理論music school M-Bankのコンテンツ)を
別のゼミ生と共に読んでいる.
こちらはどう数学に載せるか,が最大の問題なのだけど,
どうも和声あるいは倍音列をイデアル論的に扱う,
ってのがありえそうだと最近思えてきた.
で,「イデアルと和音」で先行研究がないかと探してたら,
こんな面白いサイトを発見.
The Music Animation Machine

そうそう!こういうのやりたかったんだ!
ArtとScienceが交わるところ!


そこにMusic Animation Machine というフリーソフトがあって,
MIDI sequenceを様々に視覚的な表現で見せてくれる.


普段やっているDTMではpiano rollで

ってなかんじで,コツコツ進むわけだけど,
音楽の構造を強調するように視覚的にいろいろアレンジしてくれるのが
このソフト.









五度圏上の動きとして.



中でも気に入ったのがこれ↓

トライアドで作られた音のネット(その筋の人たちには,Tonnetzとして知られている構造)
の上で音楽の流れに沿って表示してくれる仕組みだ.


いずれにしても,前期でどこまで先回りできるか,が
今年の鍵には違いない.

横を立てれば縦立たず

純正律は縦の調和,つまり和声(特に三度積み重ねの)を重視してできた.
だから転調をしないのならハーモニーをずっと維持できる.
って仕組みのつもりなのだが,実は転調せずとも破綻が起こる.
実際計算するとおかしなことになっているのに気付く.
例えば,(ちょっと人工的だけど)ごくごく普通の以下のような進行を考えてみよう.

純正律は

・1オクターブ上=周波数2倍(×P8と書こう)
・完全5度上=周波数3/2倍(×P5
・長3度上=周波数5/4倍(×M3

で音階を生成した,と考えられる.だから他の音程差は

・完全4度上=1オクターブ上の完全5度下=×P8/P5=周波数4/3倍(×P4
・短3度上=完全5度上の長3度下=×P5/M3=周波数6/5倍(×m3

と計算される.
ところで,同じ音はずっと同じ音で鳴っているべきだろう.例えば上記の譜例を合唱しているとしよう.
分かりやすいように,同じ音をタイでつないでみる.

さて,そうすると.縦糸と横糸を維持し続けると,音程が下がってしまうのが分かる.

・初めの和音(=(E1, G1, C1)と書こう)から次の和音(F2, A2, C2)ではC1を維持するので
  (F2, A2, C2)=(C1/P5, C1/m3, C1)
・(F2, A2, C2)から第3和音(F3, A3, D3)ではF2, A2を維持するので,例えば
  (F3, A3, D3)=(F2, A2, A2×P4)
・(F3, A3, D3)から第4和音(G4, B4, D4)ではD3を維持するので,
  (G4, B4, D4)=(D3/P5, B3/m3, D3)
・(G4, B4, D4)から最後の和音(E5, G5, C5)ではG4を維持するので,
  (E5, G5, C5)=(G4/m3, G4, G4×P4)

では最後の C5 を順次さかのぼって計算してみよう.

C5=G4×P4=D3/P5×P4=A2×P4/P5×P4=C1/m3×P4/P5×P4
=C1/(P5/M3)×(P8/P5)×(1/P5)×(P8/P5)
=C1×M3×(P8)2/(P5)4=C1×80/81

というわけで,初めのCと最後のCでは周波数にして80/81下がってしまう.あれあれ.
短い曲なら純正律のまま演奏しても音程が下がっていくことに気付かないかもしれない.
だが,例えば平均律楽器の介在しない合唱曲のような場合,
長く唱っていると次第に音程が下がっていくんじゃないだろうか.
とすると,一体人間はどこで帳尻合わせして元の音程に戻しているのだろう?
というか,そこが人間のいい加減さで,上手く戻してるのだろうか.


おっと,それから.数理的な興味としては,この「下がっていく」現象は
どういうパターン(和声進行)で起こるか,っていうことだ.
そのパターンは音楽の文脈に由来するものだろうか.
例えば音程が上がってしまう進行は,音楽として成り立ちにくい,とか.
この辺も卒論ネタにならないかなぁ...