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算数で起こった天下三分の計

今年度から久しぶり,そう実にこの大学で非常勤をやっていた時代からして15年以上ぶりの「算数科研究」を担当することになった.
何しろ久しぶりであるし,久しぶりの他学科相手であるし,当時に比べて一クラス60名と大人数になって少々ビビりながら始めた講義だ.
3回目では「0を称える」と称して0の役割について議論してもらう内容とした.
後半は0の代数的性質を小学生にきちんと説明できるか,を意図した問を立てたのだが,それに先立ち0についてのアンケートを取ってみた.

一問目:「0は偶数ですか,奇数ですか」を「偶数」「奇数」「どちらでもない」で答える.
結果は↓
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如何でしょう!
そういえば理科教育に発生する誤概念を利用したアクティブラーニングを提案する試みがなされているし,それに関するFDも開かれたりしていたのだけど,こうしてみると数学でもそれに類する「一般人の信仰」があるのだな,と改めて気付かされた.
(いやいや,教育学部の学生なのだからそんな悠長なことを言っている場合ではないのだけど.)
tokidoki.hatenablog.jp
さて,上記グラフの学生らの気持ちを考えてみた.
少数派の(そう,少数派!)「偶数である」はきちんと理由を言える学生もいれば,なんとなく偶数,あるいはそう聞いている,という学生も結構いるのではと思う.

では,多数派の「どちらでもない」はどうだろう.
想像するに「倍数」とは常に元の数より大きくなると思っているからではないだろうか.
普通の人は「□倍する」は通常,自然数に対し自然数倍することをまず想像するだろう.
その意味で0は自然数の2倍として見つからず,あるいは0は2で割れるか?という気持ち的にちょっと触りたくない問いを考えることになるから,そして何より「偶数」「奇数」とは自然数に対して使われる言葉だ,と思っているからではないだろうか.
実際,偶数奇数の議論は中学校で負の数を学んでも,負の数に対する偶奇はほとんど問われる機会は無いように思う.
それはもしかすると,実質的に学習単元の縦割りでのみ授業が行われ,他の単元との有機的なつながりが中学校の段階ですら希薄にならざるを得ない状況にあるからかもしれない.

そして「奇数」と答えた気持ちは,もしかすると数直線を思い浮かべたからなのかもしれない.つまり0は数直線の「真ん中」にあるイメージで,それを挟んで整数が \pm k といった形でならんでいるが,0だけはペアがいない.その半端感が「奇数」と言わしめたのかもしれない.


そうそう,ちょっとだけ脱線するけど,この「偶数・奇数」問題について実際のアメリカの小学校の授業で行われた,非常に興味深い,そしてなにより小学生自身が自らの頭をフルに使って数学をしている非常に美しい姿を記述した資料を何年か前に発見したので再度紹介.
Kyoto University Research Information Repository: 数学と教育の協同 : ハイマン・バスの挑戦 (数学教師に必要な数学能力形成に関する研究)
これ,結構学生に見せたのだけど何とも反応が無いのが悲しい.
これこそが数学をしている,あるいは数学を創造している,まさにその姿なのだけどねぇ...

さて戻ろう.次の質問は「0は3の倍数ですか」だ.
ここまで読まれた方は,次にどんなグラフになったかちょっと想像してみてください.
IMAGINE

Imagine - John Lennon and The Plastic Ono Band (with the Flux Fiddlers)

はい,結果↓
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天下三分の計が起こったよ.魏・呉・蜀です.
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またしても魏の「どちらでもない」が優勢で,おそらく偶数のときと同じ自然数バイアスが働いているのだと思う.
で,なぜ「はい」の蜀と「いいえ」の呉が拮抗しているのか.
「偶数である」と答えた蜀の兵士の一部が,「ホントに3の倍数?」と問い詰められて呉に寝返ったのだ.
もしかすると「3の倍数」という言葉が奇数っぽさを引き寄せたのかもしれない.
そうすると「4の倍数ですか」と聞いたらどうなっただろう.
偶数に引きずられて再び「はい」が増えるのだろうか.

アンケートを考えた当初は次の質問「すべての数の倍数となる数はあるか?」でやっと困るのだろうと思っていたのだけど,それに至る前に驚きの結果が見られたのは収穫だった.
で,全ての数の倍数についての結果↓
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今度も予想外で,きっと「そんなもんは無い」と多くが選ぶと思ったのに結果は少数派.
もちろん,なぜそう思ったのかをその後自由記述で答えてもらったのだけど,比較的「何となく」が多く,中には\inftyという納得できそうな答えがちらほら.
それより,わざわざそんなことを聞くのだから「あるのだろう」と思って選んだ,という回答が多かった.
まぁ,そりゃそうだ.

うん,面白い!
(面白がっている場合じゃないのだけど.)