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今年もガッサガッサしてみた

この時期は毎年,担当講義である統計とコンピュータにてガッサガッサする実験をする.
tokidoki.hatenablog.jp

今年で3年目となるこの実験の元ネタは,啓林館のページにあった授業実践だった.
www.shinko-keirin.co.jp

ただし,気をつけないと隣のクラスからうるさいと言われかねない.
(実際,今年は隣で講義をされていた先生が何事かとそっと教室を見に来た.)
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3年目ともなると結構な数の実験になる.一人50回×3年間実験参加者数272=13600回だ.
そうして得られた結果が以下.
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ここまでくると コイン>ピン>キャップ のこの順が入れ替わるなんてことは
とんでもなく低い確率になろう.
実際,10×標準偏差分の幅を取ってやっとコインとピンが入れ替わる可能性が出てくる.
そしてその確率は7.7\times10^{-23}程度だ.
そんな評価ができるのも中心極限定理のおかげなんだが,
やっぱり学生にちっとも伝わらないのがこの現象.
もちろん今年も正方形ダーツボードの実験はしてもらうし,
なかなか軽い動作でシミュレーションできるこの回のEXCEL資料は
我ながら気に入っているのでまた掲載するよ↓
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今年はこれに加えて「上か下か」のランダムウォークもEXCEL上で見せようと思った.
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5本程度,1000ステップ分を描くと↑のようになるが,この程度ではふーんで終わる.
もっと本数を描いてみよう.例えば100本↓
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こうなってくると形,いわゆる放物線がうっすら見えてくるのではなかろうか.
そしてこれらの軌跡は中心0に近いほど密度が高くなっている.
いるのだけどこれが平面では見せられない.
ということで今度は OpenProcessing にて立体的にこれを見せられるようにしてみた↓

上部は密度を立体的に表示し,その足元の影がランダムウォークの軌跡を表している.
因みに,パスの数が5000以下のときのみランダムウォークを表示するようにした.
それ以上の本数になるとヒストグラムと軌跡両方の表示はどうやら重すぎるので.


ところで全く関係ないが,とある事情によりイベントが急遽行われた.
この場を借りて,あざっす!
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私の身の回りのべき乗則(2)―名字編

今クールNHKが放映している名字番組
「人名探究バラエティー 日本人のおなまえっ!」ってのがある.
www4.nhk.or.jp
帰宅がてら見るのにちょうど良い番組なのだけど,
レア名字編ではハンコタワー1つ5000種の印鑑で人口の80%がカバーできるとか,
10万種の印鑑の在庫を持つハンコ屋さんがあってそれでも人口の98%だとか,
って話を聞いてると,「おお!冪乗則!」ってなって,早速検索.
直ぐに名字ランキングサイトが見つかる.
以下のグラフはこのページから参照.
myoji-yurai.net
幸いにもその名字におよそ何人いるか,のデータも合わせて書かれてあったので,
冪乗則が調べられる.さてやってみたのが↓
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EXCELが吐き出す近似曲線がy\fallingdotseq4\cdot 10^7x^{-1.14}で決定係数R^2が0.98を超える.
やはりなかなか良い冪乗則になっている様子.
\log-\log plot が↓
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それでも何だか二次関数っぽくもあったので,\log_{10}-\log_{10} plotでの二次近似を行うと
X=\log_{10} x,Y=\log_{10} yとして
 Y= -0.189X^2 - 0.0647X + 6.1599,決定係数 R^2 = 0.9997 となった.
因みに,人数が一人,すなわち Y=0 となるのが X\fallingdotseq 5.54 で,
すなわちランキングとしては x=10^X\fallingdotseq 347014 となって,
名字が約29万種あると言われているところからすると,ちょっと多めの評価になる.
もっとも果たして「一人」の状態までカウントして良いのやら,というところでもある.
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日本の名字は分家制で名字の派生が起こったり同じ読みのまま漢字を変えたり,と
名字の生成/消滅の過程は集団遺伝の力学系のようでもあって,
名字の力学モデルなんてのも考えても面白いのかもしれない.

私の身の回りのべき乗則

それは気のせいなだけなのかもしれないが,
何だかパソコンの動作がモッサリしてきたなぁ,
と思ったときにClean upした後デフラグをかけて,
モッサリがなくすという作業を定期的にしている.

で,そのとき分析結果として各ファイルの断片化数が報告されるわけだが,
それを分断数が多い順に並べ替えると
いわゆる「べき乗則」に従っているように以前から感じていた.
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で,とある機会に実際にグラフにしてみたところ,なかなか見事な結果になった↓
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ただし,デフラグのログが取り出せなかったので手打ちでデータを書き写したのだが,
分断数6以下のものは大量すぎて作業から外した.
EXCELによって与えられる近似曲線はy=5557.4x^{-0.95}で,
世にいうZipf則が成り立っているように見える.

それでも図に騙されている気がしたので両側対数軸 \log y/\log x で描いたのが↓
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なかなか良い感じだ.

実はこの記事を書こうと思ったのは他でもない,
予算が削減されつつある大学の電子ジャーナルを契約更新するか否かの判断材料として
ジャーナルごとのアクセス数のデータをもらったことに始まる.
早速アクセス数の多いジャーナル順にソートして描いてみたら見事なべき乗則↓
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おやおや.

この結果に気を良くして,では世間で言われているweb siteのアクセス数についても
べき乗則が見えるのかと,例えばこのブログの1日あたりアクセス数を
多い順にソートして並べてEXCELで近似曲線まで描かせると
どうもべき乗則ではなく指数分布のほうが決定係数が大きくなる.
(まぁ,決定係数が8種類もあってEXCELがどれを採用しているのか,
 とかいった厄介な話はこの際考えない.)
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あれれ,何が起こっているのか?と思い両対数グラフを描いたら
\log x=2.5 あたりから急に落ち込んでいた↓
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ならば\log x=2.5に該当する20アクセス未満の日を切り落とせば良いのか,と描いてみたのが↓
y=253.8x^{-0.408}と今度はべき乗則のほうが決定係数が大きくなった.
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まぁ,不都合な部分を切り落としたのだから,そりゃべき乗則のほうが良くなるでしょ,
ともいえるのだけど.
そういえば最初のデフラグデータも分断数が小さいものは調べなかったから,
順位の大きい先のほうは切り落としたことになっているわけで,
世にいう「べき乗則」は順位の比較的小さい部分で起こっている話,と理解するものなのかなぁ.

Art Award IN THE CUBE 2017 @ 岐阜県美術館

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ふらっと行ってきました,Art Award IN THE CUBE @ 岐阜県美術館.
art-award-gifu.jp
審査員には(私が勝手に)同士だと思っている高橋源一郎さんや
日々,折々の言葉で(勝手に)お世話になっている鷲田清一さん,
初年次演習ではかつて(勝手に)アレンジして遊んだことで(勝手に)お世話になった
逆シミュレーション音楽の三輪眞弘さんがいることも気になって行ってみた.
tokidoki.hatenablog.jp

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応募者らはこの与えられたCUBEの中に作品を作るという寸法で,何でも今年が最初の試みとのこと.
古い世代はCUBEというとあの映画を思い出すのだけどね.

CUBEキューブ Blu-ray

CUBEキューブ Blu-ray

では,中を見ていこう.
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三枝 愛「庭のほつれ」/O JUN賞.
美術館庭にぽつんと建てられたCUBE.何があるかと覗くところんと木が転がってる.
東日本大震災からシイタケ農家に必要な原木が不足したこと,
それによって生活の風景が一変したこと.
情報の激流によって薄皮でしか物を考えなくなった社会で,
敢えて考えるために立ち止まる人たち.
現代アートとはそういった人たちが居る場所でもあるのだよね.

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安野 太郎「THE MAUSOLEUM ー大霊廟ー」/高橋源一郎賞.
館内に入ると何やら不協和音がブーブカブーブカ聞こえてくる.
その発生源がこれ.大小さまざまなリコーダーがポンプから送られる空気で鳴っている.
人類滅亡後,永遠に弔いを続けるロボットという想定らしい.
しかし,こんなデカいリコーダーもあるんだなぁ,と別の角度で感心.

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柴山 豊尚「ニョッキ(如木)2017」/十一代大樋長左衛門賞.
板を重ねてそれを削ってできた,どこか別の惑星の景色のような空間.
この中で寝そべって想像すると楽しそうだ.

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森 貞人「Mimesis Insect Cube」/中原 浩大賞.
ワサワサワサッとガラクタで作られたたくさんの昆虫.「ガラクタ虫」と呼んでるそうだ.
使い古された道具たちがこうして虫として生まれ変わった.
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で,ひょいと目をやると何やら人の下半身が上の方で垂れ下がってる!
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何々と中を覗くと人が倒れてる,っていうか手がカタツムリ!
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耳のないマウス「移動する主体 (カタツムリ)」/三輪 眞弘賞.
小さな子が見たら夢に出てきそうな作品.これちょっとずつ動いてるんだ.
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壁に貼りついてるヒトの指先だって,カタツムリの目のように動いてた.
こう,こっちに寄って来るとうわ~ん,てなるよ↓
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あぁ,あれだ,ヒトがどんどんカタツムリになっていく
伊藤 潤二のマンガ「うずまき」を思い出したよ.

うずまき (2) (スピリッツ怪奇コミックス)

うずまき (2) (スピリッツ怪奇コミックス)

ちょっと落ち着こか.
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宮原 嵩広「Missing matter」.
CUBE全体に敷き詰められた「アスファルト」,ただそれだけだ.
確かにアスファルトのニオイが充満して余りそこに立っていたくない感じだった.
やがて枯渇する化石燃料,大木や自然に感じる神性と同じ思いを
アスファルトに抱く時代がくるかもしれない,ってなことらしい.

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三木 陽子「Conduit(導管)」.
そのとき全く分からなかったのだけどあとから調べたら陶芸作品とのこと.
建物の裏側なんかにありそうな導管なんだけど,これが蔓のように壁にまつわりつき,
したたかな生き物の様でもあり,
あぁ,うちの庭の草取りしなきゃなぁ,なんて思ったり.

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松本 和子「透明の対話」.
どこか懐かしい感じはフレスコ画という表現方法にあるのだろうか.
朝の透明さがなんだか涼しかったりした.

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ミルク倉庫+ココナッツ「cranky wordy things」/大賞.
寝言を言っている人の動画やら,突然音を立てるガンガンやら,
勝手にくるくる回り続ける机の上の小物.
その場は直ぐに立ち去ったが,家に帰ってから解説を読んだ.

物質という有限性を凌駕する何かしらに憑かれ、一時の『身体』がたち現れる

ああ,なるほど,だから何だかオカルティックだったのか.
そういえばケン・ウィルバーの「空像としての世界」を読んだとき,
僕らって要するに精神の受信機なんだ,と思ったのだっけ.
そう,僕らの身体はいつか土に還るまでの借り物なんだってことさ.

空像としての世界―ホログラフィをパラダイムとして (1984年)

空像としての世界―ホログラフィをパラダイムとして (1984年)

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谷本 真理「この部屋とダンス」/田中 泯賞.
一見,現代アートにしばしばありがちなダダイズム的な何か,かと部屋を覗く.
田中 泯賞を取ったとのこと,そしてタイトルには「ダンス」.
あれ,確かに部屋の落書きは何か躍った後のような,全てのものが躍動しているような.
できればタイトル見ないでそれを感じ取りたかった.ちょいと悔しいような.

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中村 潤「縫いの造形」.
CUBE全体が「縫う」という行為を表現していた.
ああ,できればその「縫う」行為の中に埋もれてみたかったかもしれない.

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堀川 すなお「モノについて」.
実は入ったところに中が見えない箱が二つ置いてあり,
そこに手を入れて入っているものの様子を感じて,それから作品を見ると面白い.
子どもたちに同じことをしてもらって,感じたことを言葉にして,
その情報を元に再びデザインするといった行為が展開されていた.
とはいえ,かなりデザインが繊細で美しかったため,
だから子どもの言葉とどれくらい対話が行われて描かれたのだろうか,
と,かえって訝ってしまう自分がいた.

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水無瀬 翔「DEMO DEPO イン・ザ・キューブ支店」/鷲田 清一賞.
後でじっくり解説を読んで,なるほど鷲田さんが選びそうな話だ,と思った.
ほら,例えば本来家庭が受け持っていた躾を始めとする様々な役割を
今どきの人たちは学校にアウトソーシングしているでしょ.
そのくせきちんと行われていないと学校を非難するでしょ?

この作品,本来どうしても社会に主張すべきことがあって
それを社会に知ってもらうために行うはずの「デモという行為」をアウトソーシングする,
っていうブラックジョークなわけだ.
しかもデモするのは人間ではなくロボット.
分業化が徹底的に進んで一生の営みがどんどんアウトソーシング化して,
果たして僕らのどこに僕らの人生があるんだろうね.
気付けばYahoo!知恵袋に課題の質問をする学生達ってのは,
学習自体もアウトソーシングしているわけで,
そんな風に上澄み液だけ啜って終わる人生って,楽しいのかね.

↓アハアハアハ,っていう機械的な笑いもアウトソーシングですか.
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さてさて,しかしこの日をわざわざ選んで岐阜県美まで行った理由,それがこの作品↓
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平野 真美「蘇生するユニコーン」.
この作品,ただのぬいぐるみではない.
架空の動物であるユニコーンを解剖学的見地を元に,
骨格から内臓,筋肉,表皮まで全てを実際に作ってあるのだ.
かつ,作家さん当人の話によれば口から肛門まできちんと一続きの仕組みにしてあり,
心臓も心房心室を作って外部からの「輸血」によって循環するように作り込み,
また口に伸びる管からは空気が送り込まれ,
それは確かに「肺」にとどけられているとのこと.
いや,実際胸のあたり,静かに上下しているのだ.
岐阜大獣医学科に足を運び獣医から学び,リアリティーを追及したとのこと.
本当は解剖にも立ち会う予定だったそうだが,
鳥インフルエンザ騒ぎで獣医学科がてんやわんやで話が流れてしまったのだそうだ.

しかし今回,その平野さんが会場に現れ「胃の交換手術」を行うのである.
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↓赤いのが,交換前の「胃」.
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ラテックス製の胃は随分と弾力性があった.
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↓うわぁ,随分と大胆に胃を押し込んでいくよ.
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↓右の黄色いのは取り出された方の胃.素材が違うのだそうだ.
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手術の最後までは見届けなかったのだけど.
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こうして思うのは,モノを一生懸命作る人というのは,やはり美しいということ.
ってお前,何を撮りに行ってるんだよ,というツッコミは無しの方向で.
いずれもILCE-6000+(SEL1670ZF4.0,SEL30F3.5Macro), Lightroomにて現像

おっと,そうそう,もちろん帰りの電車では高橋源一郎さんの本を読んでたよ.

丘の上のバカ ぼくらの民主主義なんだぜ2 (朝日新書)

丘の上のバカ ぼくらの民主主義なんだぜ2 (朝日新書)

実質日本会議である改憲勢力が2/3を超え維新を含めた大政翼賛会化してしまった国会と,
そしてその日暮らしのごく身の回りのことしか関心を持たない
羊よりも大人しい多数の同調主義者たち(これを「羊たちの沈没」という).
ひとたびこの国でテロが起これば,
あっという間に九条の精神は不安と怒りに呑みこまれてしまうだろうし,
それにかこつけて「個人」を「人間という動物」へと格下げする,
小学生の読書感想文にも劣る,しょーもない日本会議草案に流れてしまうのだろうな.
何てことあんまり書いていると,現代版治安維持法(テロ等準備罪)に引っかかったりして.
あたらしい憲法草案のはなし

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動機づけの内在化への挑戦―その後―

2年前に同じようなタイトルでエントリーしたのだけど,
今年度のScratch作品の紹介をここでしておこうと思った.
tokidoki.hatenablog.jp

この数年,何をしても反応が薄くなっていくので
今年度はもうどうなるものかと思ったが,意外にも高度な作品が生まれていた.
最終課題は例によってクローンか配列が使われていればOKの自由題.
それ以前の課題にも素晴らしいものが多くあったのだが,
今回は最終課題のみから抜粋,早速紹介しよう.
おっと,多くがgifアニメだから重いよ.



【数理部門】
256-14final
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小学低学年向けの算数教材.
一桁の引き算について「求残」と「求差」の二通りの考え方で説明している.
地味なんだけどよく見ると細かい様々な配慮がなされていた.

303-14final
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油分け算として知られる算数の問題を試行錯誤できる作品.
コップに入っているジュースの量をどう表現するのかと思ったが,
各量に対するコスチュームを作って対応していた.

【ゲーム部門A―アクション系】
初めにスタンダードではあるのだけど,かなり手をかけたと思われるシューティングゲームから.
272-14final

多彩な敵や弾の軌跡,多数のステージ等々,スタンダードではあるけれど十分に手がかけられていた.

306-14final
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様々な点で高度なプログラミングが成されていた作品.
なにしろ,説明文からして配列に入っているセリフから一文字ずつ表示させていく仕組みとなっていて,
そこだけでも十分な工夫になっている.重力のあるジャンプ系ゲームで進行するのだが,
そしてゲーム自体,自分にはとてもクリアーできない難しさだったのでデモではインチキしまくり.

【ゲーム部門B―謎解き型】
627-14final
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いわゆるパズルを解いて脱出する脱出ゲーム.
謎解きに使われた謎たちもさることながら,
カギ番号の入力方法や若干マルチエンディングになっているところなど,
よく考えられていた.

242-14final
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ミステリー仕立ての謎解きゲーム.
セリフを配列に入れ,登場人物によらないシステマティックなセリフ表示法とか,
プレイ時間が長くなることを配慮した「途中でセーブ」できるシステムとか,
犯人を捕まえるシーンではアクションゲームになったりだとか,
ストーリー性の高い作品となった.

【ゲーム部門C―パズル系】

275-14final
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いわゆるポーカー.実は2ペアを判定してくれない,とか色々不備はあるのだけど,
時間があればきちんと判定できるものになったであろう.
カードを扱うには配列の上で様々な置換計算が必要となる.
幸いコスチューム番号を使えたからこのあたりの発想がしやすかったのだろう.

295-14final
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神経衰弱.ただしコンピュータとの対戦型で,難易度も指定できる.
はて,どうやってコンピュータの難易度を決めたのだろうと見てみると,
どの程度カードを検索させるか,その範囲と確率で決めていた.
なお,カオスモードは一度でも間違えると全部カードが取られてしまう,無理ゲーになっている.

297-14final
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テトリス.Scratchの場合,ブロックの種類だけスプライトを用意しておいて
それを通常通り移動させると思うのだが,これはそういう作りではない.
いわゆる2次元配列のドット絵としてブロックを作り,
配列要素の入れ替えによって移動をする,というものだ.
なるほど,一列揃ったかどうか,こちらのほうが判定しやすいもんね.

294-14final
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ターン制のゲーム.次第に増えるモンスターに対して如何に複数からの攻撃を避けながら攻撃するか,
その移動方法に知恵を使うパズルゲーム.

288-14final
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言わずと知れたパズ◯ラなのだが,これをまさかScratchで作るとは思わなかった.
もちろん毎度色の判定と検索をしているので動作が遅くなるのは仕方ないのだが,
アイディアの地道な組み合わせでこんなものが作れてしまうわけだ.
「俺の知ってるScratchじゃねぇ」感たっぷりの,今年度最も驚いた作品である.